「三淵の奸計」とあるから、彼がいったいどんな謀をめぐらせたのだろうと思いきや、(家中の意見もまとめきれないダメ当主のくせに)すっかり上洛する気になった朝倉義景の前途に不安を抱いた三淵藤英が義景のやる気をくじくため、彼の幼い世継ぎ(阿君丸)に毒を盛って殺したということらしい。

 藤英ほど馬鹿正直に義昭と室町幕府に尽くした人はいないだろうから、そのためなら何でもやりかねない人物設定もありかなとは思うものの、いくらなんでもあんまりな汚名ではなかろうか。藤英の名前が現代人の記憶に残るチャンスは今までもこれからも決して多くはないだろうに、数え七つの子どもを毒殺した悪逆非道の人物として記憶されたまま(たぶん)フェードアウトしていくのはちょっと気の毒な気がするなあ。

 義景にしたところで、おのれの無力さゆえに、幼い我が子を失ってしまう人物として描かれているわけで、何とも切ないというか、池端さんも意地が悪いよなあ…

 

 そんなことを思いながら、『麒麟がくる』の公式サイトを見ていたら、三淵藤英を演じた谷原章介さんのメッセージが載っていた。曰く、「弟の藤孝とは志は同じでも、性格や考え方が違うところが演じながらおもしろいなと感じています。(中略)男気あふれる藤孝と、冷静に政治的な動きもできる藤英」と述べておられて、興味深く思った。

 無責任に義昭を煽った挙句に不利とみるや逃げ出した他の昵近衆はともかくも、勝ち目のないことを承知の上で義昭と室町幕府に殉じた藤英。一方で、家名を保つためとはいえ、すんなり信長に乗り換えた藤孝(と十兵衛)。どちらかといえば、熱くて真っすぐすぎる藤英と、クールで計算高い藤孝のイメージを持っていたのだけれど、『麒麟がくる』では真逆の性格設定をしていたらしい。藤英の受難も宜なるかな.。

 もし、十兵衛の盟友が藤孝ではなく、愚直で一本気な藤英であったなら、本能寺の変の後、もっとも頼りにしていた味方を失うこともなかったのではないかと、つまらない妄想をしてみたり…。

 

 さて、次回はかつて『太平記』で、婆娑羅大名の佐々木道誉を演じて話題になった陣内孝則さんの今井宗久が登場する。年輪を重ねた陣内さんがどんな今井宗久を見せてくれるのかも見どころの一つとなりそうだ。

 

 それはそうと、細川政元の「半将軍」の件。按ずるに出所はラノベか、平成以降のコミックといったところだろうか。引き続き、典拠を御存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。