敬頌新禧 〜白河夜船〜 14 last | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^


 はてさて。
どう片をつけようか。

倒れてしまった智は計算外。

ねうねうも猫の姿のまま。

助けたはいいが、
何も分かってはいない優太に智を
背負わせて、
翆屋に戻ると、
なぜか全ては丸く収まった。



先に、
猫の姿のまま、
翆屋に戻ったねうねうと、
和の段取りの素晴らしさよ。

どこがどうすればこうなるのか。
昔からの付き合いが長い雅でさえ、
舌を巻く結末となった。



「優太ぁっ!」

「勝利。
俺、なんかわからないけど、
倒れてたわ。」

ぼりぽりと、
頭をかきながら現れた優太に勝利も拍子抜けする。

「悪いな。勝利。
こいつは、何も覚えてない。
根付のことはずっとお前の胸の中にしまっておいてくれ。」

雅が、
勝利に囁くと、
勝利もそのまぶな顔で、
こくんと全てを飲み込むように頷く。



「では、
こういうことにしますかな。」


和が自分のところに戻ってきた智を、
膝の上に乗せて、
愛おしそうに撫でながら、
話しだす。



「雅と智は、
あの後天神様の境内で怪しい根付売りを見かけた。
その後ろをついていくと、
賭博小屋に気を失って倒れている男たちと、
大量の根付。
そして、
俺の財布がそこにあったと。

智が意を決して、
そいつに飛びかかったが、
智はそいつにやられ気を失って、
まんまとその根付売りには逃げられた。

そんなとこかな。」


はぁ。
全く。


和の頭の良さには、舌を巻く。

それなら、
優太が何も知らないことも、
飛貴と勝利の手癖の悪さも、
鬼のことも、
全て隠して、
なおかつ、櫻井様の大手柄となる。

「ってことで、雅。
ねうねうと一緒に、
俺の財布を持って
櫻井様の番屋に行ってきてくれな。

ねうねうは、
飛貴と潤、流星をここまでしょっぴいておくれ。

雅は、
その後、櫻井様と賭博小屋の検分だ。

新年早々の
一件落着といこうじゃないか。」



全く、
ここの主人は誰なのやら。



「はいはい。」



和の方をひとにらみしながらも、返事をする。


「和。
お前は、智の介抱だ。
奥の座敷を貸してやるから、
音を立てないように励めよ。」


嫌味のつもりで言ったつもりが、

「当たり前だ。
こいつは俺のものだからな。」


至極当然とばかり、惚気られた。











「いらっしゃいませ。」


新年早々、
翆屋の軒先では鈴を転がすような声が響く。


勝利だ。


「こちらの席が空いております。
どうぞ。まずはお茶でもいかが?」

勝利会いたさに、
今までにまして、
翆屋は若い女客で溢れ、
商売繁盛となっている。


「ねうねうさーん。
この御膳はどうしたらいいですかぁ。」


こちらは、飛貴。

勝利のように年端も行かぬゆえ、
店先にはまだ出せぬが、
どうも烹炊の才があるらしい。

ねうねうの下につけても、
見劣りがしない。




「良い見習いが入ったな。」


奥の座敷で、
櫻井様が湯呑みを口につける。


「お陰様で。
商売繁盛でございます。」


お茶菓子を出しながら、
微笑むのは雅。


今まで、
雅の色香で持っていたところもある翆屋だが、
勝利と飛貴のお陰で、
ほくほく顔がとまらない。


「すべて、櫻井様のお陰でございます。
あの二人に会わせていただき、
うちの店に連れてきてくださったおかげで、
こうやって、
私も楽になり、
櫻井様とゆっくり過ごすことができます。」



「では。
こういうことをしても、
平気だな。」


向かいに触る雅の肩を手を伸ばして引き寄せると、その割れた着物の裾から手を差し伸ばす。


「あらあら。
悪戯な手でございますこと。
与力の櫻井様とあろう方が。」


口ではそう言いながらも、
はすにだかれて、
下から見上げる雅の瞳は、
もう期待に揺れて濡れている。


「もう、俺は与力の櫻井ではない。
ただ雅の魅力に落ちた情夫(まぶ)だ。
さぁ。その口で、
俺の名を呼べ。」


櫻井に操られるように、

「翔様。」

その真名を呼ぶと、
翔の口が雅の言葉を塞ぐように、
唇を塞いだ。




⭐︎おしまい⭐︎