敬頌新禧 〜白河夜船〜 12 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^


「さぁ。
お兄さん。

気持ちよくしてやるから、
いい声でなきな。

もうすぐ夜が明ける。
いい年明けと洒落込もうぜ。」



上にのしかかられ、
着物をがばと剥ぎ取られる。



雅の美しき左肩の模様が、
その男に晒された時だった。





ぴか。



 
雅の体から、
その男を突き刺すばかりに、
翠の光が放たれる。


「ゔ。う。うぅっ。
な、なんだこれは。
お前はなんなんだぁぁぁ。」



いきなり、
浴びた光に顔を覆って男が苦しみ出す。


その隙に、
着物をさっと羽織り直して、
雅がそこに立つ。



「お前こそ、何者だ。
なぜ、人の魂を喰らい、
根付などにして、
金を貯める。

その鬼畜な振る舞い、
ただの妖では無いな。」




雅も手印を結び、
翆の光は切らさないようにする。



「あ、嗚呼ぁっ。」

掌で顔を覆い、
もがき苦しむ男。


「ぐぁぁぁぁぁぁっ。
お、俺は、
人が憎い。

人の魂を喰らい、
金に塗れ、
人の人生を狂わそうとしても、
俺の欲望は満たされぬ。

俺は、
人の欲望を喰らい尽くさねば、
気が済まないのだぁぁぁ。」


くるしみながら、
男は人の姿を崩さない。


妖ではない?
それでは、こいつは何者?


一瞬、雅が、たじろいだ時だった。


くわぁぁっ。


そいつが顔を上げた時、
目の前に現れたのは、
2本の角を生やした鬼。

常軌を逸して、
雅にとびかかってくる。


あ。しまった。

先ほどの人の姿かと思い、
油断していた雅が、
その鋭利な爪に喉元を狙われる。



しゃっ。

どこからともなく現れ、
その腕を体当たりでよけたのは猫。

ねうねうの本来の姿である。





「雅様。
危ない。
お避けになってください。

こいつは、やはり、鬼。

人を恨み、
金と色と酒の欲望に飲み込まれ、
堕落して、
鬼と化したもの。

人の魂を喰らい尽くしても、
昇天できず、
苦しみもがいているものです。

はやく、
昇天させてやってください。」


ねうねうが、
しゃぁぁぁと、
背中の毛を逆立てながら叫ぶ。


と言ってもな。
今日は結界を張る和も、
武力でもののけたちを圧倒する潤もいない。

むやみやたらに、
力を使っても、
どうすれば。

と、雅が思いあぐねている時だ。



「迷うことはない。
一気に天に召してやれ。」


智が、雅の後ろから
静かに近寄り、
印を結ぶ。

いつもと同じように、
九字の印を指を合わせて切り、


「臨・兵・闘・者・陣・列・在・前」

九字護身法を唱える。

そして、
いつもとは違い、
その後、四つの縦の線と、
五つの横の線を書くと、

ぐるぐると、
蒼き光が放たれ、
鬼に巻きつき身動きができなくさせる。



「智っ。これは?」

「迷うな。
雅。
成仏させてやれ。

お前の力こそ、
全ての苦しむものに、
癒しをもたらす力だ。

こいつも、
そして、囚われて、
根付となったやつも、
全ての思いを解放して楽にしてやれ。」


「ありがと。智。」

雅が自分の力を貯めるかのように、
胸の前で手を合わせる。




「行くぞ。雅。
急々如律令!」


「全ての邪なるものよ。
その思いを浄化して、
天に昇り、
地にあるべき姿に戻したまえ。

破っ!」


蒼き光と、
翆の光。


それぞれ、
智と雅の手より出で、

そして、鬼の体を貫く。



「あ、ああ、あぁぁぁぁぁっ!」


鬼は断末魔を上げながら、
きりもみのように悶えると、
光に溶けるように粒子となって、
天に静かに昇って行った。




⭐︎つづく⭐︎