もともと、
優男に見えてこの勝利とやらは、
頭の回転が速い男であったのだろう。
掏摸なんて稼業をしているのは、
もったいない。
淡々と話しながらも、
理路整然とした話は、
信用されるに値するものだった。
「なるほど、勝利とやら。
お前の仲間の優太は、
博打の金が払えずに、
その博打小屋の親方に囚われてしまったと。」
雅が、話をまとめると、
勝利は口も滑らかに話し出す。
「はい。
あいつは、
俺たちと違って、
腕のいい左官なんで。
ただ、博打だけがやめられなくて、
俺たちの稼業の仲間になったようなものです。
それが、
金が払えないってだけで、
博打小屋の裏に連れてかれたんで、
様子を見てたら、
あの親方に、
あっという間に根付にされてしまったんです。」
根付か。
人の魂を抜き取って、
その体だけを根付の形に変えられるとしたら、
大層な力の持ち主だな。
思わず思いを巡らしていると、
「他には?」
智が、ぼそっと聞く。
たしかに、
この根付たち。
他にも人の気配がする。
「数はわからないですが、
何人かは一緒に。
俺も
どうにも信じられなかったんですが、
この天神様の屋台で、
縁起物とかでその根付が売り出されてまして。
優太が売られてはいけない。
慌てて、
その一心で、
根付だけ集めてた次第です。」
頭を下げる勝利。
それを尻目に、
「ねうねう。いけるか。」
雅が、
ねうねうを横目で見ると、
「あいよ。」
もうすでに、
ねうねうの姿はなく、
声だけが答える。
「ここで、
和と俺たちを信じて待っててくれるか?
必ず、
優太とやらも、
櫻井様に捕まった飛貴も、
連れて帰る。」
雅が、
勝利に問いかけると、
勝利は、その目に強い光を宿しながら、
雅の目を見て頷いた。
⭐︎つづく⭐︎