敬頌新禧 〜白河夜船〜 8 | 嵐好き・まるの ブログ

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まるです。

Over50の葉担櫻葉erです。
徒然におはなしを書き、投げ込んであります。
基本は読み手。
色々なブログに顔を出しては、叫ばせていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします^ ^


しめしめと言わんばかりに、
両手を袂に突っ込んで、
顔面全部が人間国宝ばりに整った優男が、
小路を歩いていく。


「飛貴には悪いが、
まずはこれだ。

確かめておかないと。」

袂から、
根付がついた財布を取り出した時だった。




すた。


目の前の道に、
いきなり人影が現れる。



「な、な、なんだ?
お前たち。」


上から音もなく現れたのは、
男と女。


「くふふ。
その財布の持ち主みたいなもんかなぁ。」

優しく声をかけるのは雅。


「あなたね。
悪いこと言わないから、
その財布返してくれる。

ついでに
お姉さんたちに、
根付だけ、
盗んでるわけも教えてくれると嬉しいなぁ。」


艶やかに笑うねうねう。


「くぅっ。」


そいつは、
いきなり踵を返し、
雅とねうねうから逃げ出そうとする。



「そうはいかないんだよね。」



走り出そうとした瞬間。

その優男の目の前に急に、
現れたのは、和。


「俺の財布、返してくれない?」


のんびりと手を差し出した和の、
脇を抜けて、
そいつが走り出そうとした瞬間。




すっ。


上から跡形もなく現れた智が、
蜘蛛の巣にかかった虫のように、
音もなく静かに生け捕る。

優男は、
智に腕を掴まれるだけでなく、
後ろ手に手を取られ、
地べたに頬を押し付けられるように、
召し取られると、


じゃらじゃらじゃら。



その男の袂から
沢山の根付が転がり落ちてきた。












「で、なんで、こんなうさんくさい根付だけ
集めたわけ?」



和が、
根付を一瞥して、
睨むように話す。



ここは翠屋の離れ。
与力の櫻井たちは番屋で、
こいつの相方を締め上げていることだろう。


しかし、
根付がこいつの手元にあることから見ても、
本星はこいつ。

こいつから、
話を聞いて片をつけなければ、
お江戸の平和は守れない。


雅も、
和の隣に立ち、
腕を組んで上から睨みつけていると、




「まぁまぁ。
雅様。


櫻井様のお役に立ちたいからって、
いきりたつんじゃありませんことよ。

さぁ。
この優しいお姉様に、
なんでも話してごらんなさい。

まずは、
名前を教えてもらえないかなぁ。」


婀娜なねうねうに、
迫られて、
逆にそいつは怖じつけずいたのだろう。

このままだと、
このお年を少し召されたお姐様に、
身も心も文字通り食われてしまう。


こんな優男なら、
その焦りは、当たらずとも遠からずだ。


「お、俺は勝利と言います。
どうか、
見逃してやってください。

これにはわけがあるんです。」


勝利が頭を下げると。

「そりゃそうだよなぁ。
こんな、
怪しい根付ばっかり集めてるんじゃ。」

智が、
妖の匂いがぷんぷんさせる
沢山の根付の山を見て、
ため息をついた。


⭐︎つづく⭐︎