敬頌新禧 〜白河夜船〜 4 | 嵐好き・まるの ブログ

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根付は、

財布の飾り物として粋なお江戸の男たちの必需品とも

言えるものである。


その飾りの意趣で、

その男の価値も上がるってものだし、

また玄人衆の女子(おなご)などは

その根付で男の良し悪しを図るところもある。


その辺は三味線のお師匠、和の守備範囲である。



「それで、流星とやら。

あんたの根付ってのはどんなもんだったのよ。」


「はい。

普通の龍が掘られた象牙細工のものでございます。

流石にこう見えても役者ですから、

ご贔屓筋の方から頂いた根の張るものではございますが、

これと言って特徴があるものではございません。


それよりも、

新年のお祝儀がたんまりと入った財布だけが戻ってきたことが

全くもって解せません(げせません)や。」




流星がしきりに顔をしかめて首をふる。





「他の野郎たちの根付ってのは?」



智も興味津々に首を突っ込む。



「そいつらも聞けば

財布の中身は全く掏られて(すられて)いず、

一度財布ごと無くなったあと、

根付だけ盗られて戻ってきているらしいでさ。


掏摸だとしても

すごい腕の持ち主だと思います。


櫻井さま

どうにかならないものですかね。」



顔を顰めて考え込む櫻井さまに気がつかれぬよう

ねうねうが


「これは、私たちの仕事みたいですね。

新年早々ですが、

どうも 怪しい匂いがします。」


雅の耳元で囁く。


新年早々、

騒ぎには足を突っ込みたくはない翠屋の主人は、

わかっていないふりで過ごしたかったが、

智、和、潤の視線をもろに浴び、

嫌々ながら頷く。






与力さまは、そんなことは全く気がつかずに



「雅。

どうも新年の祝いは少し待ってもらえないか。

お前と一緒に新年の祝いをしたいのは、

俺もだが、

今日下手人が上がるかどうかは別として、

調べだけはつけておきたい。



ただ、俺が言っても

与力として顔が知れ渡っているため、

下手人は何も動かないだろう。


お前が囮になって

天神さまをもう一度あるいてくれないか。」




いつもの仲間のこいつらの頼みなら、

無視してやるところだが、

愛しい櫻井さまの頼みなら仕方ない。



「はい。わかりました。

では、櫻井様。

櫻井様のお支度は私がいたします。

大事なお体寒くならないようにしてくださいましな。」



翠屋の主人は、

いつもの仲間には絶対出すことのないよそいきの甘い声を出しながら、

櫻井様を別の座敷にと連れ出した。











⭐︎つづく⭐︎