尚輝はハンドルを両手で握り、
無言でまっすぐ前を見る。
夜露に濡れて輝く夜道は、
最初はまぶしいライトに囲まれた高速道路を走っていたが、
インターを降りると、
どんどん街灯も少なくなり、
ただ、
ヘッドライトだけが行手を照らす。
「どこまで行くんだ。」
流石に数時間、車を走らされ、
口を開く。
「地の果て。
俺と地獄に堕ちよう。」
暗い夜道の中、
遠雷が微かに響く。
にこりともせずつぶやいた尚輝の言葉は、
真っ暗な車の中で、
不気味に響く。
「さ、ここだよ。」
ついた場所は、
舗装もしない道の突き当たりの山荘。
誰もいない山荘の鍵をがちゃりと開くと、
埃臭い部屋の中に俺を押し入れる。
「尚輝?」
俺を座らせて、
自分は俺の肩に手を当てて尚輝が微笑む。
「尚輝。
なんで、こんなとこに来たんだ?」
答えを聞いてもせんないことと知りながらも尋ねる。
「ごめん。創さん。
俺も、命を狙われてるからさ。
あの家から、
行方をくらます必要があったんだ。
ここなら、
誰も来ないから。」
慈悲のこもった瞳で俺を見下ろす。
「尚輝。今までありがとな。」
俺も最後の感謝を尚輝に捧げると、
「創さん。
愛してる。
せめて、俺の手で引導を渡したかったんだ。
でも、その前に。
俺を、
俺の体だけでも愛して。」
尚輝が俺の目の前で、
ゆっくりと服を脱ぎだした。
⭐︎つづく⭐︎