「翔ちゃーん。」
ばたばたばた。
雅紀が走ってくる音がする。
はぁはぁはぁ。
危機一髪。
大野さんのおかげで、
全てを放出し、
ヒトの姿に戻った俺。
くるりん。
流石に、
peopalの長老。
俺のものを口から、
べっと吐き出すと、
宙返りして、
大野さんもいつもの白衣の保健室の先生に戻る。
よかった。
蝙蝠と栗鼠の睦合いなど、
可愛い雅紀にはあまり見せたくはない。
二人がヒトに戻った
その瞬間。
ばたん。
ドアが開き、
雅紀が駆け寄ってくる。
「翔ちゃーん。
戻った。戻ったんだよねー。
良かった。良かったぁぁぁ。」
涙を俺の胸に押しつけながら、
抱きついてくる。
「こら。
雅紀。
なんか言うことあるだろ。」
抱きついてきた雅紀を引き離して、
大野さんの方に向ける。
その間に、
慌てて俺の裸の体に、
シーツだけでも巻きつける。
「ごめんなさい。ごめんなさい。
大野先生。
櫻井先生を戻してくれて、
ありがとうございます。
ちゃんと俺がコントロールできなかったから、
櫻井先生をこんな目に合わせちゃったぁぁ。
本当にちゃんと言うこと聞きます。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
速射砲のように謝る雅紀。
悪気はなかったことはわかるが。
もう、俺は、
あんな目には会いたくない。
大野さんもそう思ったんだろ。
「わかった?相葉。
俺たちの力って、とんでもないことになることが。」
「はい。本当にわかりました。
普通のヒトである翔ちゃんをあんな目に合わせちゃうなんて。
俺。
翔ちゃんを栗鼠にしちゃったら、
もうあんな気持ちいいことしてもらえないし、
翔ちゃんと遊べないし。
どうしようかと思って。」
ぽろぽろぽろぽろ。
涙を流す。
なんか、反省の方向が違うような気がするが、
ま、雅紀だから仕方ないのか。
とんっ。とんっ。
大野さんは優しく雅紀の肩をたたく。
「良かったな。
ちゃんと櫻井先生が元に戻って。
もう、寝ぼけてるとはいえ、
あんなことするんじゃないぞ。
俺たちが、
相手の首を噛むってことはな。
相手の命も自分が請け負い、
共に生き、
そして、新しい命を紡いでいく誓いなんだ。
今日はたまたま、うまく戻ることができたが、
今度はそうはいかないぞ。」
「はい。」
ぐぢゅぐぢゅ泣きながら、
項垂れる雅紀。
「じゃあ。わかったなら。」
大野さんが俺にばちんとウィンクをかます。
「あとのお前のお仕置きは、櫻井先生にお任せする。
怖い思いをしたのは、
櫻井先生だ。
ちゃんと言うことを聞くように。」
大野先生が、
くるんと宙返りをしたとおもったら、
白い煙と共に、
また天井へ消えていった。
⭐︎つづく⭐︎