籠いっぱいに入った林檎を
コトゥーゲさんに渡す。
「ほかにできることある?
腰痛いんでしょ。
俺手伝ってあげるよ。」
林檎をわたしながら聞く。
庭師さんなのに腰が痛いって、
商売あがったりだもんね。
俺、暇だから、
力仕事ぐらいなら手伝えるし。
「お前。いいやつだな。
じゃ、草むしり頼めるか?」
「うん。」
ちょうどやることもないし。
ガラスの靴は脱いで裸足で無心に草をむしる。
くふふ。
単調な作業だけど。
むきになると面白い。
「ほー。
お前。面白い奴だな。
お姫様なのに。
名前は?」
コトゥーゲさんが、目を見開いて聞く。
「雅紀。」
普通に答えると、
「そうか。お前がマサキなのか。」
コトゥーゲさんが腕を組んで少し考え込むようにする。
「ま、考えても仕方ないか。
そうだ。
一緒にそこの公園で酒でも飲むか?」
いやいやいや。
思いっきり手を振って断る。
俺大体高校生だし。
あと、公園で飲むってなんだよ。
こんな綺麗なお城があるのに。
「ありがとう。
それより、俺。
ほかにお手伝いできることあるかなぁ。
ちゃんとみんなの役に立ちたいんだけど。」
「ふうん。
そういう奴なのな。
じゃ、俺の友達のサワベ紹介してやるよ。」
コトゥーゲさんが、
庭を突っ切って、
俺を台所の方に連れて行く。
あ。芝生の上で、
誰かヨガしてる。
思わずコトゥーゲさんに聞いてみる。
「あの人。だれ?」
「あれは、コジ。
インドのヨガ達人だ。」
ふぅん。
あ、あそこにテントが
ぽつんっ。ぼつんっと、
二つある。
一人は大きなフライパンで、
料理作ってて、
もう一人は、
一生懸命火おこししてる。
「じゃ、あそこでキャンプしてる人は?」
「あれは、俺のツレのニシムラと、
その友達のヒロシ。
ついでにあそこで、『ビスタ』って踊ってるのがハルナだ。」
ふぅん。この国にも、
いろいろな人がいるんだなぁ。
こんな城の中の広場でキャンプかぁ。
さすが、おとぎの国。
シンデレラの世界だなぁ。
そんなことを思いながら、
づかづかと、
城の裏側の方に歩いて行くと、
そこには大きな台所がある。
「ストップウォッチボーイっ!」
そこには、
大きな声をあげて
手をあげて、
時間を測ってる男の人かいた。
⭐︎つづく⭐︎