【このテーマの記事は、UAV写真測量一般について、日々の文献調査や研究で得た情報を掲載します。】
セルフキャリブレーション付きSfMは、画像のみからでも、各カメラ(各画像)の
〇 外部パラメータ:位置と向きを表すパラメータ
〇 内部パラメータ:画角・歪みなどに関するパラメータ
を同時に推定できる技術です。
現在のUAV写真測量における、標準的なカメラパラメータ推定方法となっており、MetashapeやPix4DmapperのようなSfM-MVSソフトウェアでも、最初の段階で実行されます。
しかし、どんな状況でも上手くいくわけではありません。
カメラの配置(動き:Motion)やタイポイントの配置(≒被写体の形状)によっては、
カメラパラメータに不定性を生じることがあります。
この不定性を、カメラパラメータの代わりにモデルの形状で表現すれば、ひどい配置の場合、正しい形状に任意の3次元射影変換を加えたものになります。例えば被写体が正しくは立方体の場合、各辺が長さもバラバラで直交もしないような、いびつな6面体になってしまいます。
このようなカメラ・タイポイントの配置のことをCritical Configuration [1] [2]と呼びます(※)。日本語では特異配置などと呼ぶようですが用例は多くないようです。
特に、タイポイントの配置によらず不定性が生じるカメラの配置(CMS: Critical Motion Sequence [1] [3])
が存在します。平易に言えば、被写体がどんな形状でもうまくいかない撮り方です。
例えば、当サイトでも繰り返し議論してきた鉛直下向き平行撮影のように、カメラの向き(光軸の向き)が一定の撮影は、CMSの一種です [1] [3]。ピンホールカメラで、内部パラメータが全画像共通という条件でも、焦点距離fが(モデルの形状で表現すれば、鉛直と水平の相対的なスケールが)不定となります。ただし、1パラメータが定まらないだけですので、CMSの中ではまだかわいい方かもしれません。
UAV写真測量では、被写体の形状はどうしようもなくとも撮り方は制御できるため、CMSとならないような撮影を計画するべきでしょう。もちろん現実の撮影では、位置や向きに計画からのずれが生じるので、撮影計画がCMSでも実際は完全なCMSにはなりませんが、「ずれ」頼みのSfMは明らかにリスキーです。
(・・・後日、加筆予定)
※ カメラとタイポイントの配置のうちの片方の意で用いられることもあります。
[1] Hartley, R., & Zisserman, A. (2004). Multiple View Geometry in Computer Vision (2nd ed.). Cambridge: Cambridge University Press. doi:10.1017/CBO9780511811685
[2] C. Wu, "Critical Configurations for Radial Distortion Self-Calibration," 2014 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, Columbus, OH, USA, 2014, pp. 25-32, doi: 10.1109/CVPR.2014.11.
[3] P. Sturm, "Critical motion sequences for monocular self-calibration and uncalibrated Euclidean reconstruction," Proceedings of IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, San Juan, PR, USA, 1997, pp. 1100-1105, doi: 10.1109/CVPR.1997.609467.