【このテーマの記事は、UAV写真測量について、日々の文献調査や研究で得た、PhotoScanに限らない一般的な情報を掲載していきます。用語の説明は「PhotoScanを極める」に譲ります。】
ドローンに搭載したカメラによる下向きの撮影の計画では、
画像1枚に写る地表の領域(ここではフットプリントと呼ぶ)を考えます。
例えばフットプリントが150 × 100 mとなる対地高度で、画像長辺・短辺方向のオーバーラップ率を各80%にするには、長辺方向に150×(1 - 0.80) = 30 m、短辺方向に100×(1 - 0.80) = 20 mの間隔で撮影するという具合です。よってフットプリントの見積もりを誤ると、意図したオーバーラップ率の撮影になりません。
通常、鉛直下向きの撮影におけるフットプリントは、カメラ or レンズメーカー公称の焦点距離から、理想的なピンホールカメラを仮定して計算されます。しかし、歪みの大きい広角カメラなどでは、この計算結果は実態と大きく乖離し得ます。
【通常の撮影計画で想定されているフットプリント】
例えば、DJI Phantom 4 RTKやPhantom 4 Proのカメラで、縦横比2:3の写真を撮る場合を考えます。
これらのカメラでは、35 mm版換算焦点距離(センササイズが36 mm×24 mmだった場合の焦点距離)が24 mmとされていますので、水平面を上空100 mから鉛直下向きに撮った画像に写る領域は、150 m×100 mとなります。世界座標系で地表を水平面Z = 0、カメラの位置を(X, Y, Z) = (0, 0, 100)とすると、
下図の緑領域です。
この領域の面積はまぎれもなく150×100 = 15000 m2です。
【実際の(歪みを考慮した計算による)フットプリント例】
次に、歪みを考慮した計算で、実際に写る領域を求めてみます。ただし、カメラによる歪み補正はしない設定で撮る場合の話です。
例として、山口大学のあるPhantom 4 RTKで歪み補正OFFで撮影した、ある画像セットのSfMで得られた内部パラメータ (Agisoft Metashapeのカメラモデルの係数):
f = 3657.93954, cx = -10.2533, cy = 17.1815, K1 = -0.267893, K2 = 0.116246, K3 = -0.0454132, K4 = 0.00851159, P1 = 0.000193747, P2 = 0.000224912
を用いて解析する(地表面に設けた多数の格子点群の投影を計算し、画像内かどうか判定する)と、
下図の緑領域のようなフットプリントが得られます。
この図で、
赤:画像に写らない領域
緑:画像に写る領域(フットプリント)
青線:上述の通常の計算で得られるフットプリントの外縁
です。負のK1などによって生じる樽型歪み (barrel distortion)により、いびつながらより広い範囲が写っています。
緑領域の面積は約21000 m2であり、通常想定されているフットプリント(青枠)の面積100×150=15000 m2より約40%も広いことがわかります。青枠の見積もりは明らかに小さすぎます。
この面積は、縦横比2:3の長方形に喩えると、縦118 m×横177 mの長方形の面積に相当します。
また、上図の黄緑領域に内接する長方形を考えると、その大きさはおよそ縦107 m×横177 mです。
つまりこのカメラのフットプリントを100×150 mではなく107×177 mと考えて撮影計画を立てても、過大評価ではないわけです。むしろ、(大きく歪んだ外縁領域が有用かどうかは別として)内接長方形の外側の領域をカウントしていないぶん、それでも控えめなフットプリントの見積もりと言えます。Phantom 4 RTKのカメラに限らず、広角レンズを内部の歪み補正なしで使う場合には、このようなことが生じ得ます。