【このテーマの記事は、UAV写真測量について、日々の文献調査や研究で得た、PhotoScanに限らない一般的な情報を掲載していきます。用語の説明は「PhotoScanを極める」に譲ります。】
お陰様で本技術ノートは、土木・測量分野の多くの方にお読みいただいていますが、
短時間でポイントを掴む必要のある皆様には、記事が長すぎるのだろうと思います。
そこで、一般的なUAV写真測量(セルフキャリブレーション付きのSfMを用いるUAV写真測量)について、
精度面での失敗を避けるために、これだけは避けて欲しい、よくある間違いのチェックリスト
を作りました。ほとんど随時更新型マニュアルからの抜粋ですが。
あくまで最低限のリストで、これさえ注意すれば十分というわけでは決してありません。
説明を省きましたので、各項目がなぜダメなのかについては、マニュアルや他のページをご覧ください。
【標定点・検証点の設置】
- 画像から自動検出できないパターンの対空標識を使う。
- 自動検出の成功率が低い、不十分な大きさの対空標識を使う。
- 標定点をほぼ同一標高または同一平面上に置く。
【撮影】
- 風で草木が揺れているときに撮る。
- すべての写真を鉛直下向きに撮る。
- フォーカスや絞りを固定しないで撮る。
- 揺れる植生や水ばかりが写った画像が生じるような低高度から撮る。
【解析】
- UAVから得られた撮影位置の座標情報に数m以上の誤差があるのに、SfMに使う。
- SfMが用いる各座標情報(タイポイントの画素座標、標定点の画素座標・世界座標、(用いる場合)撮影位置の世界座標)に関する重みを設定しない。
- 対空標識が写った大半の画像で自動検出が成功していることを、確認しない。
- SfMに使った標定点での残差(推定した座標と別途実測した座標の差)を精度とみなす。
【認識】
- UAV写真測量の精度は、UAV・カメラ・レンズ・解析ソフトの性能、オーバーラップ率、地上画素寸法(GSD; 地上高さでの1画素のサイズ)でほぼ決まる(※ 201001加筆)
- プロが正しい方法で撮影・解析すれば、精度は一定範囲に収まる。
- オーバーラップ率や画像数が大きすぎても、精度に悪影響がある。
- 誤差は原理的に、地上画素寸法より小さくはならない。
書き忘れている項目は、随時加筆していきます。
※ UAV写真測量業務を発注するとき、地上画素寸法 (GSD)を厳しく指定するのは不適切と考えます。理由は一言で言えば、GSDと精度の関係が強くないためです。詳細は次の通り:
- 三角測量(MVS)の前にSfMをして、そのSfMが精度のボトルネックの1つである。高度を下げてGSDを上げるほどより小さい特徴点がSfMに使えるようになるが、同時に対象領域全体の歪みが生じやすくなる。どちらが大事かは状況による。
- 三角測量に2枚でなく多数枚の画像を使う。上限精度が基線長・高度・GSDで決まるという、画像が2枚の場合の伝統的な公式は適用できない。
- 特徴点や対空標識の画像上の位置の同定は、GSDより細かく(サブピクセル精度)で行われる。
- (おまけ)複数高度撮影の場合、GSDは定義できない。