対空標識を減らす方法(更新) | 山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

山口大学 空中測量(UAV写真測量)研究室の技術ノート

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UAV写真測量において、対象領域にちりばめられた標定点(GCP)・検証点に対空標識を設置し、測量・回収する作業は、最も大変な現地作業です。この作業量が、UAV写真測量のコストを左右すると言っても過言ではないでしょう。

 

平成29年度第3回動体計測研究会(ARIDA;9月26日@東大生研)に招待いただき、現在一般的なUAV写真測量(空撮 → SfM → セルフキャリブレーション付きバンドル調整 → MVSによる3次元点群生成)について、国土地理院のマニュアル案よりも、対空標識(を置く標定点・検証点)を減らせないか」という問題提起をさせていただきました。

 

発表スライドはこちらです

(半透明塗りつぶしを多用しています。9月28日に半透明が有効なバージョンに替えました)

 

要点は次の通りです。

  • 必要な標定点の数・配置は用途(ジオリファレンス or バンドル調整)次第。
  • 小さな領域では、標定点の用途をジオリファレンスに限定することで、標定点は対象領域の4隅にあれば十分となる。河道のように細長い領域でも、小さなブロックに分割して解析することで、同様の状況が作れる。
  • その際、非線形の系統誤差を抑制するための工夫として、傾きをつけた撮影の導入の他に、手動タイポイントを用いたSfMの設定の最適化や、標定点に関する交差検証 (CPCV)によるSfMの精度確認が可能。
  • それでも精度が不十分な時は、検証点(もともと検証用に設置した点)も含めてバンドル調整に動員すればよい。その場合の精度評価は、検証点に関するleave-one-out交差検証 (VPCV)で可能。

※ 統計学的な視点から、SfMを統計的モデリングとみなしたアプローチです。「なぜそれで良いのか」の理解にはSfMの他に「過適合」 「交差検証」に関する知識が必要です(資料には説明が含まれません)。

 

※ テーマ「PhotoScanを極める」で提案した手法を含んでいます。

 

※ 171130追記:運動場の実験例で、フォーカスを∞に固定したように書いてありますが、DJI GS Proでそうしたということで、実際には接写の設定になっているようです。詳細はこちらをご覧ください。

 

※ 171229追記:平行撮影では、SfMにおいて(完全に平行の場合)奥行き方向のスケール(内部パラメータのf)が不定となるほか、ドーム状変形などが生じやすくなると言われています。上記発表資料中の運動場での実験では、平行撮影の設定で撮影していますが、それでも地表面の形状を標定点なしで再現できたのは、飛行撮影中に自然に生じるカメラ向きのわずかなバラつきによると予想されます。標定点をジオリファレンスのみに使う場合には、今回のように自然な向きの変動に頼るのではなく、少し傾いた撮影を計画に取り入れるべきだと思います。

 

※ 180126追記:その後山口県の2河川で、200 m四方程度の領域で実験(撮影の設定:高度60・110 m、直下向き平行撮影、縦横のオーバーラップ率各80%、Phantom 4 Pro使用、標定点4点)、ジオリファレンスのみでは精度が悪いこと、例え4標定点をバンドル調整に動員しても、4点の配置により精度のバラつきが大きいこと、そして高精度を与える配置に法則性が見いだせず、事前に知ることが難しいという結果が出ました。詳細は資料が準備出来次第、学会等で報告させていただく予定です← 2018年5月に報告しました。上記発表資料中の小規模な運動場での実験では、ジオリファレンスのみで高精度が出ていますが、幸運だっただけかもしれませんのでご注意をお願いいたします。