世界的に有名な精神分析医フロイトとユング。
2人は深い親交の後、絶縁状態となる。その原因は1人の女性だった。
デビッド・クローネンバーグ監督の「危険なメソッド」はこの3人の関係を描いた実話の映画化だが、もちろんクローネンバーグが監督するからには感動ヒューマンドラマなどではなく、実にクローネンバーグらしい世界が描かれている。
1904年、世界的に有名なチューリッヒの精神病院に勤務する精神科医ユングは、ロシアから移送されてきたザビーナという重度のヒステリー患者の女性に“談話療法"と呼ばれる治療を試みる。
それはユングが信奉する精神分析界の大家フロイトが提唱する新しい治療法だった。
この治療によりザビーナは幼い頃父親にぶたれて快感を覚えて以来、屈辱を受けることで性的に興奮するマゾヒストである自分が不道徳でけがわらしい存在だと悩み続けていることがわかる。
この治療法は効果はあったが、同時に無意識下で深く繋がる危険性が伴うことをユングは自覚していなかった。知らず知らずのうちに2人の関係は深まり、ザビーナはユングに肉体関係を迫るが、ユングは我慢し拒み続けていた。
そんな時フロイトに頼まれ、彼の弟子であるオットー・グロスという精神科医を治療をすることになる。
フリーセックス主義者のグロスはユングにザビーナと関係を持つよう挑発し、「オアシスの水を飲むことを忘れずに」と書置きを残して病院を脱走する。
それをきっかけにユングはザビーナとアブノーマルな行為で愛しあうようになっていく。
もしこれがクローネンバーグのオリジナルなら主人公がさらに背徳の世界へと呑み込まれていくか、現実と妄想の区別がつかなくなるかしそうだが、実話である以上そうはならず、それなりに収まっていく。
言うまでもなくユングは歴史に名を残す精神分析医になっていくのだから。
マイケル・ファスベンダーは明らかにクローネンバーグ好み(ニヒルで細面)の俳優で、いつかは出演すると思っていたが、今回さらにヴィゴ・モーテンセン、ヴァンサン・カッセルと最強トリオのキャスティングだ。
だが残念ながら史実をなぞっただけの印象は拭えず、特に後半はだらだらした感じだった。
結局PG12の縛りが災いしたのか、実話の脚色の限界なのか、ヴィザールな描写にも迫力がなく、(とはいえキーラ・ナイトレイは変態プレイシーンが嫌で途中で降板しようかと思ったらしいが)エスカレートする途中で中断したような結末だった。
いっそのことこれをモチーフにしたクローネンバーグのオリジナルでめくるめく悪夢を観させてほしかった。
キャスティングがよかっただけに残念。