私は、お婆ちゃんの顔を見るなり泣いてしまった。

お婆ちゃんは、泣いてる私と荷物を見て家を出た事を察してくれたのか、家の中に入れてくれた。

そして、私が落ち着くのを待ってお婆ちゃんは話し出した。


『いつかこういう日が来ると心配してたよ。ヒサコ(育ての母)はあんたを嫌ってるからね。本当ならあんたじゃなくてタカオ(父)にその矛先が向かなきゃいけないのにあんたばっかりやられてきたからね。タカオも逃げてばかりいるから、その分あんたに風当たりが強かったんだねぇ。あんたの母親(実母)はあんたを簡単に手放したわけじゃないんだよ。タカオが女の子が欲しくて欲しくて仕方なかった。でも、うちに生まれるのは男ばっかりでね。そんな時あんたが生まれたんだ。タカオは喜んでヒサコと別れる事を考えたんだけど、ヒサコが子供を連れて自殺しようとして別れられなかった。ヒサコもタカオの浮気と育児ノイローゼになってて鬱って言う心の病気になってねぇ。それでも、離婚しない事を条件にあんたをうちの子にしたんだよ。あんたの母親は何度も家に来てはあんたを返してくれって頼んでたけど、経済的にあんたを引き取る事は出来なくて泣く泣くあんたを手放したんだ。お婆ちゃんから見ればあんたも孫だよ。お婆ちゃんはあんたの味方だからこの胸が一杯になったら何時でもおいで』
と、話してくれた。

私も正直にお婆ちゃんにだけは自分の気持ちを話した。

『私は、ママに罪悪感がある。私はママの子じゃないのに私を育ててくれてるから。私が居なければママは楽しい毎日を過ごしてるでしょ。でも、毎日朝から晩まで文句を言われたり、叩いたり蹴飛ばされるのはもうイヤ!!パパだって、見て見ぬ振りをしてる!!私の事を本当は好きじゃないんだよ!!私はもう家には帰らない。お婆ちゃん、わたしが働けるようになったらお金は必ず返すからここに置いて欲しい』と頼んだ。


お婆ちゃんは夏休みの間だけと言う約束で私を預かってくれた。


私は自分の洋服(全て年子の兄のお下がり)を適当に通学用の手提げ鞄に入れて、ランドセルに全教科の教科書とノートを入れて、今まで貯めて置いたお金1万位を持って家を出た。


もうここへは二度と戻るまい!と、幼い私は意気揚々と家を出たものの行き先がない事にすぐ気付いた。

夜暗くなるまで近所をウロウロしてた。

どこにも行く宛のない私は二世帯の祖母の家へ行った。
実母が来たのを機に父の態度が少しずつ変わってきた。

仕事から帰ると決まって私の部屋に来て1日の出来事を聞いていた父が、週に3日…2日…1日だけ…と遂には部屋に入る事は無くなった。

本当に1人になったんだと言う孤独感も無かったと言えば嘘になる。
しかし、“愛人との間に生まれてきた私”と言う意味を幼児だった頃より遥かに理解していたこの頃の私は、孤独感より父に対する嫌悪感の方が強かった。


本当に身勝手な父の姿に居場所をなくした私は家出を決意した。