美しく勝つ | UNIV. of TSUKUBA Rowing Team

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部員が日々の出来事や練習、試合の予定や結果についてかいています。
気楽に書きますので温かい目で見てください!

こんにちは。23生の藤岡正吾です。高校生の頃から出てみたいと思っていたインカレに、一年生ながら出場することが出来ました。ありがたいことです。今回は、その振り返りをしていきます。

 

今回クルーを組んだのは三年の後藤さん、匠さん、ほのかさん、二年の大誠さんでした。初期には、同期で比文の中田がCOXとして入ってくれました。今回は途中でほのかさんに交代でしたが、また一緒に乗ってほしいなと思っています。

さて、最終的には五大学でエイトに乗ったぶりのクルーになりましたが、シート順の都合や全日本の関係もあってあまり話したことのないメンバーでした。最初は緊張していましたが、礒野さんが「後藤の作る艇は楽しいぞー」と言っていた通り、本当に乗っていて楽しい艇だったなと思います。とにかく仲が良かったです。そのおかげもあって、漕ぎのこともそれ以外のことも、何でも話せる良い雰囲気でした。

この構図すき

 

さて、私たちは、他の大学と比べて乗艇の時間が圧倒的に短いという課題があります。それを克服する手段の一つが、「会話」でした。練習の中で、キリの良いところで艇を止め、直前までの漕ぎについて話し合う。陸に上がったあとも、艇の前やビデオを見ながら話し合う。この流れで感覚をすり合わせ、練習の質を極限まで高められたと思っています。先輩四人は自分よりも艇に鋭く反応していて、話し合いはいつも引っ張ってもらいました。これからの筑波の練習モデルになると思います。

その話し合いの姿勢を養ってくれたのは、やはり礒野さんです。私が春休みに戸田入りしてから、ローイングについて本当にたくさん会話しました。ローイングはどうしても己の感覚に頼る必要があります。自分漕ぎ、相手の漕ぎ、艇の進み方。その一つ一つを感じ取り、言語化していく能力が必要です。その能力に長けた礒野さんとの会話は、とても良い訓練になりました。

付きフォアクルーに加えて、礒野さん、ひろとさんにも相談を重ねることで漕ぎの解像度がどんどん上がっていきました。ありがとうございます。

高校までの私は、ここまで漕ぎのことを考えることはありませんでした。今考えると、本当に漫然と「これやればいいよねー」といった感じでメニューを消化していたんだなと思います。もっと自分たちの漕ぎを研究していれば、と後悔する反面、今はそれが出来ているなという充実感もあります。

インカレのクルーを組んだのは、私がスイープオールを握るようになってからおよそ半年でした。漕ぎもだいぶ定まってきて、言語化も次第に出来るようになってきたタイミングでした。その点でも、上達の幅がかなり大きくなったと思います。

一瞬だけ乗ったStella氏。粗探しが得意だった。

 

もちろん、良いことばかりではありませんでした。まず、私の新型コロナ感染です。付きフォアの練習を止めてしまいました。付きフォアのクルーには拡がりませんでしたが、あろうことか男子ペアの二人に拡げてしまいました。自分の体調管理能力の低さを痛感しましたし、とても気まずい日々でした。いくら仕方がないことではあると言っても、よりによってなんでこの時期に、なんでこのメンバーがと、たいへん落ち込みました。ただ、このコロナ禍はインカレの一ヶ月前だったことは不幸中の幸いです。インカレメンバーにかんしては誰一人書けることなく、最後まで漕ぎきることができました。

付きフォアの練習でも、何度も行き詰まりました。どうしても調子が上がらなかったり、昨日できていたことが出来なくなったり。

 

忌まわしき記憶

 

ただ、辛い時期を乗り越えてきたからこそ、形がどうであれ決勝まで進めたんだと思います。

インカレ中は、あまり良い漕ぎが出来ずに苦しみました。とくに初日はとても緊張していて、身体がふわふわと宙に浮かぶような感覚でした。スタート後も思うように身体が動かず、緊張が抜けたのは1,000mを漕いでからでした。急に身体の支配権が手元に戻ったような感覚に驚きました。二日目、三日目は初日ほど緊張しませんでしたが、自分たちの漕ぎを取り戻すことが出来なかったのは残念です。D決勝5位、全体20位という結果は、とても微妙です。確かにここで満足してはいけません。また、後述する私の目標と照らし合わせてみても、納得できるものではありません。

 

そうは言いながらも、大学のローイングの世界に飛び込んで半年で、インカレの決勝で順位をつけることが出来たことを嬉しく思っています。

もちろん、経験者仲間には一年生ながらもすでに入賞したり、メダルを取ったり、優勝した人もいます。私も私立のセレクションを受けたり、推薦で私立に入っていたりしたら、あの輪の中にいたのかな、と思うこともあります。しかし、このインカレにでて、筑波でよかったんだと確信しました。それは、インカレの男子エイト決勝の時です。東北大が銅メダルを獲得し歓喜の渦となる中、胸が熱くなった私の隣で、ある私大の一年生がこう言いました。「東北、なんで三位なのに一位みたいに喜んでるの?」若干笑いを含んだようなその言葉に、私は衝撃を受けました。これが私立か、と。全国制覇を本気で目指している集団なのか、と。ただ、そのスタンスは一位以外を否定するような姿勢にも受け取れました。この集団の中にいたら、私はきっとボートを辞めていたと思います。今年の筑波は、女子ペアが3位、男子ペアが7位に輝きました。そのことをチームみんなが祝福する雰囲気が、とても素晴らしいなと感じています。

それは一種の甘えかもしれません。勝つ気がないと思われるかもしれません。ただ、そうではないのです。負ければ悔しいし、レース前は勝ちたいという気持ちが溢れてきます。ただ、本気で全国制覇するつもりなのかと聞かれると、はいと即答できる心も技能もありません。

じゃあいったい、何のために漕いでいるのか。その答えを見つけたのも、このインカレでした。

 

男子ペアのB決勝、私は伴走を任されました。これが礒野さんとひろとさんのラストレースか、と感慨と興奮に胸を熱くしながら、練習を見守っていました。二人は淡々と、練習をこなしていきます。そしてあっという間にスタートの時間。自転車のハンドルを持つ手は手汗でじっとりと濡れていました。その時、はっと頭の中に浮かんだのは、クルーを組んだときいつも私の前に座っていた礒野さんの姿でした。「いいかい?美しく勝つよ」レース直前、いつものように振り向いて、クルーを見渡しながら言ったその言葉が、はっきりと聞こえました。

スタートのブザー音で一気に我に返り、自転車から必死に声援を飛ばしました。ラストスパート時には応援のみんなも一緒に走っていました。心の中は感動と興奮でぐちゃぐちゃで、涙がぼろぼろと溢れていました。たとえレートが低くても、一本一本を確実に力強く、正確に漕いでいく。決してペースを落とさず、勝負所で一気に仕掛ける。誰よりも早く観客席を通り抜け、声援を浴びながらの一着。まさに、言葉通りの「美しく勝つ」漕ぎでした。こんなに感動するんだ、ローイングは美しいんだと心の底から感じた瞬間でした。まるで二人のようにどこまでも青く澄んだ空に、高々と突き上げれた二人の拳を、私は一生忘れることはありません。

 

その雄姿を胸に刻んで。

 

それ以来、明確な目標が定まりました。それは、「美しく勝つ」ことです。私は、この言葉を次のように解釈しています。まず、ローイングの美しさを究極まで突き詰めること。究極というのは生半可な覚悟では到達出来ません。それを男子ペアの二人は身をもって私たちに教えてくれました。あの血のにじむ(実際ににじんでいた)努力こそが、究極なのです。そうして得られる美しさは、艇の進み方、体の動かし方や動きの相方、オールの動き方、艇そのもの、自分の身体など様々です。それらを突き詰めた先に、勝利があるのです。

 

私はまだ一年生です。幸運にも、ローイングに向き合う時間はまだたくさんあります。まだ一緒に漕いでいない仲間もいます。まだ出会えていない、未来の仲間も大勢いるはずです。これから組むクルーみんなで、「美しく勝つ」漕ぎを追求していきたいと、そう思っています。

 

最後に。礒野さん、ひろとさん、半年の間本当にありがとうございました。ひろとさんは同じ九州男児としてとても頼もしく感じていました。インカレの途中でお風呂で聞いたアドバイスが本当に役に立っています。勝手に「ひろとキャッチ」と銘々しました。まあ許してくれますよね。礒野さんには、ここに書き切れないくらい大きな影響を受けました。ローイングはもちろん、音楽のことや映画のこと、かなり話が合うのでお話しするのが楽しくて仕方なかったです。艇のことも部活のことも、すべて含めて「ローイング」を、教えてくれたのは礒野さんです。またご指導をお願いします。

 

美しかったです、ほんとに

 

ひろとさん!!!!

 

長くなったのでこの辺で終わります。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

次は新人戦です!エイトです!間髪入れる暇もないのですが、とりあえず今シーズンを漕ぎきります。

これからも筑波大学漕艇部の応援をよろしくお願いします!!

 

いざ表彰台へ。かっこいい背中

 

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