ご存じ怪盗猫娘 第10話 兄弟の絆 | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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 1

「いかん!先ほどの戦いでタマスケのエネルギーが切れたようじゃ!急いで出撃したのでエネルギー充填の途中だったからじゃ……。」
博士が叫んだ。

「ここから先は俺たちだけで行きます!博士はタマスケとここで待っていてください!」
ユーゴが答えた。

「先輩!ここでは携帯電話が通じません!これでは応援を呼べません!」
松池が叫んだ。

 松池と八木沢が侵入した出入口は既に閉ざされていた。

「こうなったら俺たちも先に進むしかねえようだな……。松池!覚悟きめろよ!」
八木沢が答えた。

 彼らは機能を停止したピコを持って階段で下の階に降りて行った。



 2

  地下1階に降りた彼らの目の前に、全面に大きく口を開けた悪魔の顔が彫られた赤、青、黄の三つの扉が並んでいた。

 扉の前に黒いフードマントで全身を覆った3人の人物が立っていた。

「お前ら!猫娘姐さんはどこだ!」
ユーゴが叫んだ。


「此処は地獄の最下層コキュートス。我はルシファー様に仕えしアンドロイド三魔将が一人カッシウス。」

「同じくブルートゥス。」

「ユダ。」

「ルシファー様の元に進むには、我らの持つ三つの鍵が必要也。」

「3組に別れ、我らを倒し鍵を手に入れるがよい。」

「我らはこの扉の向こうで待つ。」

 そう言って3人は扉の中に入って行った。


「兄さん!これは罠です!やつらの手に乗ってはいけません!」
マナブが叫んだ。

「マナブ……。男には罠だとわかってても行かなきゃならねえ時があるんだ……。お前たち全員が行かなかったとしても俺一人だけでも行くぜ!」
ユーゴが答えた。

「そうそう!餓鬼の癖によくわかってんじゃねえか!」
八木沢が言った。

「刑事としては褒められたもんじゃないですけどね!」
松池が皮肉を込めて言った。


 結局、話し合いの結果
マナブ、フトシ、カケル
八木沢、松池
ユーゴ、シーザー
の3組に分かれて進む事に決まった。


 3

 マナブ、フトシ、カケルの3人はユダが入って行った黄の扉に入った。
部屋の中央ではユダが待ち構えていた。
部屋の奥にはもう1つ扉があった。


「ヒョッヒョッヒョッ。わしの相手は小僧三人組かや。こりゃ歯ごたえが無さ過ぎて失望じゃのう……。」
 ユダがフードマントを脱ぎ捨てた。
その下から現れたのは、両手、両足の先に剣を装着した白髭を伸ばした小柄な老人であった。


「お前の相手なんておれ一人で充分なんだなっ!」
フトシがユダ目掛けて駆けて行った。

 ユダはフトシの足元に向かってねばねばした液体を吐き出した。
液体は即座に固まってフトシの両足をその場に固定した。

「あ……足が動かないんだな!」
フトシが叫んだ。

「ヒョッヒョッヒョッ。いかに力が強くとも、その場から動けねば手も足も出るまいて……。わしは手も足も出るがな……。」
そう言ったユダの体から、頭部と両手足が分離して宙に浮かんだ。

 両手足は宙を飛び、別々に動いて3人に襲い掛かった。

 3人はユダの攻撃をかわし続けるのに精一杯だった。

「このままではいつか3人ともやられてしまう……。何か策を考えなければ……。」
マナブはユダの動きを観察しながら考えた。

(どうやら四肢に指令を送っているのは頭部のようだな……。そして頭部はエネルギー補充のためなのか定期的に胴体と合体しなければならないようだ……。)

「カケル……。あいつの頭が胴体に合体するタイミングを見計らって頭を捕まえてフトシに渡すんだ……。」
マナブはカケルに小声で指示した。

(おいらはいつも兄貴たちに助けられてばかりですまないと思ってた。今こそおいらの男をみせる時だ!)
カケルは思った。

「今だ!」
カケルはユダの頭部が胴体に合体する直前、部屋の中央にダッシュしてユダの頭部を捕まえた。

 カケルは全速力でフトシの元に走り、ユダの頭部を手渡した。

「ひいいいッ!や、やめるんじゃアアアアアアッ!!!」
ユダの頭部が叫んだ。

「フトシ!!やれ!!!」
マナブが叫んだ。

 フトシは両手でユダの頭部を後ろ向きに持ち、自分の額を思い切り叩き付けた。

 ユダの頭部は粉々に砕け散った。
それとともに、宙を飛んでいたユダの四肢は床の上に落ちた。

「やった!」
マナブとカケルが叫んだ。

「頭は使いようなんだな!」
フトシが笑いながら言った。


 マナブは持っていた薬品でフトシの足に掛かった粘着液を溶かした。
そしてユダの胴体から鍵を取り出した。


 3人はその鍵を持って奥の扉に進んで行った。