ご存じ怪盗猫娘 第9話 面影  | 高須力弥のブログ「ローレンシウム荘事件」

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 8時、マオは一人で神堂邸に乗り込んで行った。

 タキシードを着たグレイがマオを出迎えた。

 

「ようこそおいでくださいました。野々原マオ様。私はルシファー様の下僕グレイと申します。ルシファー様は食堂でお待ちでございます。」

 グレイがマオを食堂に案内した。

 ルシファーはすでに席に着いていた。
 

 

 

 

 

グレイがルシファーの向かいの椅子を引き、マオが腰掛けた。

「はじめまして。野々原マオさん。いや、怪盗猫娘さん……。ぼくはダイモンシンジケートの現頭首神堂ルシファーと申します。」
ルシファーが口を開いた。

「あなたとの出会いを祝してまずはワインで乾杯しましょう。」
「まだ未成年よ!それより早くピコを返して!」
マオは言い返した。

「ふふふ……冗談ですよ。では突然ですがマオさん。あなたには高校に入る前の記憶がありますか?」
ルシファーが尋ねた。
マオは驚いた。

「無いでしょう。それはあなたがこの僕と同じように神堂十蔵の息子ルートヴィヒが造ったアンドロイドだからです!」
マオは言葉を失ったままだった。

ルシファーは壁に掛かった肖像画に目を向けた。
そこに描かれている赤ん坊を胸に抱いた女性の顔はマオに生き写しであった。

「こ……この人は……?」
マオはようやく口を開いた。

「神堂ルートヴィヒと、その母マグダレーナです。」
ルシファーが答えた。

「幼い頃に母を亡くしたルートヴィヒは母マグダレーナの姿に似せてアンドロイド「イブ」を造り、「イブ」をサポートするロボット「アダム」を造りました。」
ルシファーは続けた。

「人類と自然が調和した理想の世界「エデン」を作るためでした。しかしそれから彼は死に至る病を発病し、計画を変更しました……。」




 11年前、トウマたち「ブラックジャック」が神堂邸から少女型アンドロイド「イブ」とサポートロボット「アダム」を盗み出した。

 トウマは「アダム」を起動させ、ピコと名付けて自分のサポートロボットにした。
「俺の名前はトウマ。今日からお前の名前は「ピコ」だ。」

 そしてトウマは「イブ」を山野田工作博士に預けた。トウマは博士の息子の親友だった。


 それから1年後、トウマは息子たちを救い出すために監禁されているビルに行く準備をした。
「ピコ。もし俺たちが帰って来なかった時は山野田工作博士の所に行け。」
トウマはピコにそう言って出て行った。

 ピコは山野田博士のジャンク屋を探し出して中に入ったが、バッテリーが切れ意識を失ってしまった。


 山野田博士の親戚である野々原スミレは事故で夫と娘を失い絶望していた。

 山野田博士はスミレに同情して「イブ」を渡した。
博士は家族を失った悲しみをよく理解していた。

 スミレは「イブ」を失った自分の娘「マオ」として育てた。

 そして「マオ」は青水学園に入学し、現在に至った。





 マオはルシファーに広く天井の高い暗い部屋に案内された。

そこには黒い悪魔の姿をした巨大なロボットが宙に浮かんでいた。

ピコはそのロボットの胸にはめ込まれていた。

「このロボットは「ディ―テ」。ルートヴィヒが生前完成させれなかったものをぼくが引き継いで完成させました。」

「あのサポートロボット「アダム」は近くにいればぼくの持っているこのリモコンで機能を停止できるのです。「アダム」は「ディ―テ」にどうしても欠かせない重要なパーツでした。」

「「ディ―テ」が完成し、あなたがぼくの元に来た今、いよいよルートヴィヒの考えた2番目の計画を実行に移す時が来たのです。」

「これよりプランB「人類絶滅計画」を実行する!」

ルシファーは缶を取り出した。

「これはルートヴィヒが開発した人類のみを死滅させるウィルスだ。これを大量生産して世界中に散布する!」

「さあイブ!いや、わが妻「リリス」よ!ぼくと共に人間のいない理想の世界「インフェルノ」を作るのだ!!」


「そんな事はさせない!」
マオは猫娘に変身した。

「夜の世界をひた走り 悪を見据える二つの目 その名も怪盗猫娘 悪党どもを退治いたします!」
猫娘はスタンロッドを構えて名乗りをあげた。

「やれディ―テ!リリスを捕えろ!」
ルシファーはディ―テに命令した。

ディ―テは空中から猫娘に掴みかかろうとした。









その時、部屋の扉が打ち破られもう1体の黒い巨大なロボットが入って来た。
その顔は猫のようで、胸に鈴のようなマークがあった。

「猫娘!助けに来たぞ!」
ロボットがしゃべった。

「その声は博士!」
猫娘は叫んだ。

「以前捕獲してあったロボットをわしとマナブで中に乗って操縦出来るように改造したんじゃ。タマスケと呼んでくれ!」


「俺たちもいるぜ!」
クロネコブラザーズとシーザーが現れた。

「おいおい……クロネコブラザーズを追ってきたらヤバい所に来ちまったぜ……。」
八木沢と松池も現れた。

 タマスケが飛び上がってディ―テの胸からピコをもぎ取った。

 ディ―テの目から光が消え、床に激突して動きを止めた。



「そんな手でぼくを止める事は出来ませんよ……。」

突然、猫娘の下の床が開き、猫娘は暗闇の中に落ちて行った。

ルシファーが壁の一人用エレベーターで下の階に降りて行った。