「火花」又吉直樹

 

 

 

 

 

ピースの又吉が芥川賞をとってから、話題になった一冊。

最近始めたオーディオブックで耳読書した。

 

お笑いは全く見ないわけではないけれど、「わりと昔からよくテレビに出ている有名芸人」しか知らないので、まず芸人の世界観が見えたのが新鮮だった。まず感じたのが、「芸人って寂しい仕事なんだな」ということ。

 

売れないお笑い芸人の主人公「徳永」が先輩芸人「神谷」と出会い、その二人の日常がひたすら淡々と描かれている。読み始まってすぐに感じたのが、「この神谷という芸人、長くは生きていけないんだろうな」ということ。とにかくメンタルが弱くて(弱そうには見せないのだけど)、ギリギリの所で生きている感じ。

 

描写がとにかく細かくて、最初その細かすぎる表現がちょっとうざいとも感じた。でも、細かいだけあって(オーディオブックだからかもしれないけど)、登場人物が目の前にいる様な錯覚にもなった。音や匂いでさえ目に浮かんでくるような。

 

繰り返すけど、二人のやり取り、特に神谷の生き方がとにかく孤独で、寂しくて、つらくて、見ていられない。だから後半、一瞬、本当にすこーしだけ、希望の光のようなものが見えた時、心から安堵して涙がでた。でも、やっぱり最後は後味が悪いまま終わる。

 

そして、この本を読み終えた時、ちょっと大袈裟かもしれないけど、自分の身も心も削って観客に笑いを与える芸人にもっと私たちは敬意を表するべきなんだろうなと思った。

 

それではまた。

 

まるいまど