ブラジル経済の規模について
平成23年12月26日
クリスマス明けの26日、興味深いニュースをBBCで見つけたので、今回取り上げてみようと思います。
表題のとおり、「ブラジル経済の規模」についてです。
この記事を基に、ブラジル経済に関する自分の意見を付け加えながら簡単にブラジル経済について説明してみようと思います。
有力な新興経済国・BRICsの一角として、他国の関心を集めるブラジルですが、国際社会での影響力や経済規模、日本にとっての重要性のいずれを見ても、中国が群を抜いており、BRICsの4カ国と言うよりも、「中国+3つの新興経済国(もはや新興国という言い方は適切ではないと思いますが)」という見方の方が適切ではないかなと思います。
しかし、この3つの中では、ブラジルは経済規模で見ると、中国に次ぐ大きさを誇っているのです。
さて、今回見たニュースは、「ブラジルの経済規模が2011年末に英国のそれを上回る」というものです。(参考:http://www.bbc.co.uk/news/business-16332115 )
2010年に中国経済がGDP規模で日本を上回ったというニュースは、世界の注目を集めました。そして、経済規模順に国名を挙げると、米国・中国・日本・ドイツ・フランス・イギリス(!)・・・とG8主要諸国+中国とそうそうたるメンバーが並んでいます。
今回の報道は、イギリスの「経済・ビジネス調査センター(CEBR)」という機関が調査したデータに基づいてなさました。今後の、世銀やOECDなどのより信憑性の高いデータが来年に発表されるまで、確かなことは言えませんが、BBCの報道はイギリス国民に少なからずのインパクトを与えたことでしょう。
ブラジルがイギリスのGDPを抜かした(と報道された)ことで、ブラジルは世界第6位の経済大国へとなりました。ブラジルは、2010年に、既にイタリアのGDP規模を抜き去り、世界第7位の経済大国となっていました[1] 。意外かと思われるかもしれませんが、ブラジルは、中国に次ぐ3大新興経済国の中では、最大の経済規模を誇っています。
もっとも、「経済の規模」は必ずしも絶対的に重要な要素というではなく、むしろ「世界第●位の経済大国」などとこだわっていたのは日本くらいかもしれません。
1人当たりのGDPで見てみると、ブラジルは10710ドルで、世界で第58位(2010年)となっており[2] 、2010年の国勢調査では、国民の約6%に当たる約1140万人がファベーラと呼ばれるスラム街に住んでいると発表されおり、大きな貧富の差は、他の発展途上国と同様、大きな国内問題の一つとなっています。そしてそれが、ブラジルの典型的なイメージの1つとなっている「治安の悪さ」へと繋がっています。
また、今回のデータはドルで計算されており、ドルに対して大きく増価しているブラジル通貨・レアルの過大評価が大きな追い風になっていると思います。また、イギリスと比較して、ブラジルが勝っているのは経済規模・人口に加えて、サッカー・女性のセクシーさのみかもしれません。
しかし、いずれにせよ、日本と同じく80年代末から90年代前半に大きな経済の停滞を経験し、発展途上にあるブラジルが、イギリスを経済規模で追い抜かし、世界第6位の経済大国となったことは、経済力が国際社会でのプレゼンスに与える影響力の一つの要素であることを考えると、国際社会の大きな関心を集めることになると思いますし、ブラジル国内でもそれなりに大きく取り上げられています。
また、BBCの記事では、以下のように書かれています。
「我々は、経済の大きな変化の一部を目の当たりにしている。それは、西側から東側への変化が起こっているだけでなく、食糧やエネルギーなどのコモデティを主に産出している国家が、徐々に経済のランキングのリストに上がってきているといった変化でもある。」
アメリカやフランスは、食料品などを大きく輸出していますが、上位5カ国はいずれも国内に大きく発達した工業を有しており、高付加価値品の輸出に高い競争力を誇っています。
他方、ブラジルが誇る高付加価値産業は、航空機とバイオエネルギーの2つくらいではないでしょうか(GDPへの寄与率で考えると、工業が5割、農業が3割となっており、工業の経済に占める割合は米国と同程度となっておりますが、その多くは国内もしくは比較的競争率の低いメルコスール内での消費となっており、世界的に競争力は高くはありません)。
そのため、ブラジルの域外への輸出は。専ら、大豆・コーヒー・牛肉・鶏肉(日本が輸入する鶏肉の約9割!がブラジル産)・オレンジなどの食糧品(いずれも世界第1・2位の輸出額)や鉄鉱石・石油などの一次産品に依然として大きく依存している構造となっております。
一時期前は、輸出を一次産品に依存している経済構造は、商品価格の上下に大きく左右され、大変不安定な経済基盤となっていると思われていたと思います。しかし、これらの価格は、中国やインドなどをはじめとする途上国での食糧需要の増加や、投機資金のコモデティマーケットへの流入などとともに、年々上昇傾向にあります。
したがって、今後の国際経済においては、一次産品の輸出に大きく依存していく国家も、それなりの利益を享受することも可能になっていくのではないかと思いますし、他方では日本などの食糧を大きく輸入に頼っている国々は、国内での食糧生産を拡大させるなど、食糧安保を再考していく必要があるのではないでしょうか。
ブラジルは、世界第5位の土地を有しており、食糧生産を拡大させる潜在性も大きく残っており、今後もアグロエクスポーターとして大きな存在感を有していくでしょう。日本もブラジルさんの食糧に引き続き多く食べさせてもらうことになっていくことになると思います。また、基本的にブラジル人はお金を使うことが好きで(笑)、かつ皆ポジティブな考え方なので、日本とは違ってお金の循環は大変良く、これは経済を刺激するポジティブな要素となっており、失業率の低下にも一役買っています。
他方で、2011年のブラジルの経済成長予測(ブラジル中央銀行)は、3.0%と低成長となっています(2012年の予測は3.5%)。ブラジル中央銀行は、基本的に世銀やOECDなどの国際機関よりも高い&ポジティブな数字を出している印象を受けており、実際にはもう少し低い2.5%程度の成長となるのではないでしょうか。
すなわち、いくら欧米が再度の世界的不況にあえいでいるとは言えども、世界の経済成長を牽引する有力な新興経済国として見ると、経済成長率は低いと考えられますし、中国の足元にも及びません。インドも、2011/12年度の経済成長が7.3%となると見積もられており、ブラジルの倍以上の経済成長となっております(堀川さん、間違ってたら訂正願います)。
また、政策金利が11%と主要国の中では断トツの高さとなっているにも関わらず、インフレ率は7%前後と高くなっており、国民、とりわけ貧困層の生活を圧迫していますし、高金利が経済の成長のブレーキとなっています。
工業面でも、一次産品の輸出に大きく依存しているために国内の工業の発展度合いは低いものと認識しています。例えば、ブラジルは世界最大のコーヒーの輸出国ですが、【コーヒーを輸出し、ネスカフェの加工したインスタントコーヒーを輸入して、私を含む消費者が飲む】といった、とてもお粗末な構造となっています。こういったプロセスを、今後は国内のみで行っていくべきではないでしょうか。
更に、2009年以降、中国が、ブラジルの最大貿易相手国となっている事実も見過ごせません。中国は、ブラジルから専ら鉄鉱石及び大豆といった一次産品を輸入しています(輸入全体の75%を占めている)。他方、中国はブラジルに自動車やパソコンなどの付加価値産品を輸出しています。すなわち、両国間の関係は、ブラジルにとって分の悪いものとなっており、ブラジル側は中国に輸入の多様化を行うように働きかけていますが、この構造はさほど変わらないでしょう。また、ブラジルの経済成長も、中国(を筆頭とするアジア)に大きく依存したものとなっております。外交面でも、ブラジルのジルマ大統領が、2010年に就任して最初に訪れた国はアルゼンチンであるが、2カ国目は中国を訪問しており、中国を重要なパートナーとして見ていることは明らかです。
まとめ
・ブラジルのGDP規模は、世界的に見ても大変顕著なものとなってきた。
・一次産品の輸出に大きく依存する国家が、経済規模でG8諸国を年々抜き去っていることは、世界経済の大きな変化の1つである。
・ブラジルの経済成長には、中国の存在がある。
・(私見)国内には大きな課題も多数あり、今後の展望はあまり明るいものとは言えない。
(余談)
「2014年のワールドカップや2016年のオリンピックといった大型プロジェクトがあり、ブラジルの将来は明るい」という意見をよく見ますが、私の個人的な意見としては、言われるほどブラジルの将来は明るくはないと思いますし、潜在力ではやはり中国やインドなどと比べて、大きく劣ると思います(理由は、面倒なので割愛します笑)。
両親からも、「ブラジルの国債を買おうと思っているが、どうだ?」という質問を今年されましたが、あまりおススメはできないと答えました。
日本にとっては、経済面外交面での重要なパートナー国の1つではあるんですけどね~。
(以上)