ボブ・ディランの代わりにパティ・スミスが歌っていた。
Hard Rain's Gonna Comeだった。
途中でPattiは感極まってしまって一瞬歌えなくなった。
けれど再び歌い始めると最後までしっかり、Bob Dylanの言葉の大海原を語りきった。
ノーベル平和賞ではなく、文学賞。
これがRock Musicianたるボブに与えられることがどんなことなのかは、
はっきり俺なんかには明言できない。
でもこれはひとつの頂点なんじゃないか。
そんな感慨が胸にあふれた。
ノーベル賞という全世界から承認されている栄誉を与えられることで、
Rock Musicは世界から完全に認められた。
そのことで、ロックを何らかの特別なもの――空気や水のように
生命維持に必要不可欠なもの――として取り込んでいる人間にしか見えない、
ほかの音楽とRock Musicのあいだにある境界線がはっきり提示され、
新しいスタートラインに立った。
そんな気がしたのだ。