一見して熊の彼は学生に見えた。
我ら夫婦はつつじがおか公園という場所で5分にいたるかという咲き具合の桜を楽しんでいた。
酒を飲み、持参の飯を食い。
彼は一人でいわゆる花見の場所取りってのをやっていた。
5m四方はあろうかというブルーシートを敷き、その脇には一人用のテントを張り、
花見の場所取りとしては、彼としては完璧な大勢だったに違いない。
がしかし、彼は完璧に落ち着いていられなかった。
風のせいだ。
ひとたび風が吹くたびにテントから彼の上半身が現れた。
彼は立ち、めくれあがったブルーシートを見つめる。
石が必要だ。
と彼は思った。
つづく