雨の日の過ごし方を忘れてしまったなあ――と思ったのはまっすぐ地面に落ちていく雨を、ベランダから、全然きょうは風がないんだなあなんて思いながら眺めていた時だった。なんでかなあ、と考えて思いつくのは、ずっと雪だったからということだった。でもそうかなあ、もっとちゃんとした理由があるんじゃないかなあ、とさらに考えてみたんだが、思い出せない。しょうがないからいつも通り、ずんがずんがとウォーキングに出て、野良犬だってそこまでなんねえだろうってぐらいずぶ濡れになって帰ってきた。今は野良犬なんていないけど。見つかったら保健所に連れてかれちまう世の中だから。でも野良猫は連れて行かれない。収容される猫はそれまで飼われていた猫だ。彼らにはもう雨の日さえ訪れない。そうなんだ。きっと初めから知らなかったのだ。雨の日の過ごし方なんて。俺は。