移籍会見での智宏はまるで、玉手箱を開けてしまったあとの浦島太郎だった。
10年前、浩治とともに即戦力新人としてキョジン軍に入ったばかりの頃のアイドル張りの色つやは
すっかり失われていた。
お肌ボロボロ。
しかしそれにしても、と智宏は思う。
なにもこいつと一緒に移籍させなくったって……。
表向きは相手も強力守護神たるストッパーを出すのだから、抑え候補になるような男を、
ということななんだろうが、これじゃあ誰が見たって、
まとめて厄介払い!
以外のなんでもない。
独身をいいことに、みずからの長い手足、くりくりお目々を武器に、
夜の街をブイブイ言わせまくっていたこいつと一緒なんて。
露骨だ。
智宏の歴史的汚名は、この移籍によって決定的になってしまった。
ああ、なんであんなに飲んでしまったのか。
ps.
しかしなぜにあの球団は俺がファンだった時代から俺の贔屓にばかり
痛い目を合わせるのだろう。
川相といい、仁志といい……。
最初から相性が悪かったんだな、俺とあそことは。
頑張れ!二岡、林!
実力が汚名を上回ればいいのだ!