伴侶は翌日の天気予報をチェックしないとどうにも気がすまない人である。俺は朝起きて目の前に広がっている光景にはどうせあらがえないのだから天気予報など見てもしょうがない、と思う人である。明日の最低気温が何度かなんていうことよりも、その期に及んでどう対処するかが問題なんだし。
しかしタクシー乗務員なんてものをやっていると、ふと妻の天気予報好きに感謝してしまう時がある。客に訊かれるからだ。あしたはどうなんだろうねえ。
私は奥さんのおかげで一週間の週間天気予報を見ている。即座に、あしたはバッチリみたいですよ、と言えたりする。しかし基本的にはやはり当日、場面場面でいかに順応していくか以上に必要なものはない。予備知識などあってもなくても関係ない。だから、朝起きても、さて行くかとなるまでは外の様子は見ない。
昨日は最高だった。さて、となってカーテンを引いたら……真っ白だったのだ。ボクが出かける頃に起き上がるママはいつもそうするように布団を押し上げながらまず訊いてきた。外、どう?
真っ白、と我輩は見たままを言ったよ。またぁ……と女房は相手にしねえ。だがあえて、マジマジ!などと強調したりはしねえ。見ればわかるんだしな。そしてもう一面の、大きいほうのカーテンを引く。かかあは、えーっ!マジぃ!?マジ叫ぶ。
その期に及んでどう対処するか、なんて言うけど、僕ちゃんの場合、対処する気になれない、という選択肢もあるんだ。カチンカチンに道路がスケートリンク化している時の選択シ。的確な選択シ。卸商団地の道幅がゆったりした裏道でさてゴロン! でもこんな日は即座に無線が鳴るんだな。遠見塚二丁目お願いします。ほ~い。目的地もないままにスケートリンクを走るのがいやなだけなのね。仕事があるんならスケートリンクも我慢できちゃう。ほらス~イスイ。
ほらね。天気予報なんてあってもなくてもおんなじ……なのは、オラがイマイチ怠けモンだからか?
▼「天壌無窮――石井亨(元仙台市長)」