一泊二日の一日目は午後3時15分前ぐらいに宿に着いてから結局4回風呂に浸かった。これには最初に入ったあと、ながいあいだ部屋に戻らなかったせいですっかり体が冷えてしまい、浸かりなおしに行ったのも含まれる。
二日目はちょうど7時ごろに目が覚めた。
「いびき、うるさかったよぉ」と伴侶は主張する。
俺にはそんな記憶はないがしかし少々呑みすぎた感は否めず、そんな夜は決まっていびきをかく習性があるので、たぶん言う通りなのだろう。う~ん、とひと唸りして謝罪に変えさせてもらった。
朝食は8時である。宿としてセッティングできる一番遅い時間である。朝めし前にひとっ風呂浴びられるようにその時間にしてもらった。
「さ、行きますか」と夫は言う。
「どっち行く?」と妻。
「上」
4階の露天が目当てだ。
夜と違って、朝の風呂は混雑している。やはり11月25日の朝の☆☆ホテルもそうで、直径2.5mほどの円形露天風呂にはすでに3人ほど浸かっており、仕方なく室内の展望風呂にまずは浸かるが、その3人が出てくるや否やさてとと腰を上げる。が、一瞬先を行った者たちがいた。お父さんと小さな女の子の二人だった。狭い風呂なので独り占めしないと足を伸ばせないのだが、まあしょうがない。あとに続く。
空は前日以上の上天気である。真っ青。雲ひとつない。目の前には2才ぐらいかと思える女の子にちまちま話しかけるお父さんと、父の膝に乗っかってぴよぴよお父さんに答える女の子。
お父さんは小さな頭である。小顔。その髪の毛が坊主狩りで、目がくりっとしていて、体は骨と皮という風情、まるで修行に入ったばかりの若い小坊主さんである。その膝の上で女の子が何やら口ずさみ始めた。とっても印象的な歌詞だった。
「ち~んぽこち~んぽこ……」
延々これの繰り返し。
シッと言うお父さんの声が小さく聞こえた。がしかし……
「ち~んぽこち~んぽこ……」
娘はとてもこの歌が気に入っているのだ。
娘はお父さんの膝の上にいる。視線がお湯の中に向かっている。
とても印象的な情景だ。
やがてお父さんは誰に対してか知らないが開き直ったようだった。「そのお歌、○○ちゃんが作ったの?」
うつむいたまま○○ちゃんが答える。「うん」 そして続ける。「ち~んぽこち~んぽこ……」
かわいいお父さんとかわいい女の子とかわいいお歌。
もうちょっとつづく。