おとといの夜、伴侶がカーテンの脇から外の様子を確認していたので、きのうの朝、なんともはや完璧な雪景色!を見ても特に何という感慨もなかったが、やはり気分は少し沈んだ。ボロボロになるなあ。
ほんの少し迷っただけで、チェーンを装着することに決定し、ガシャガシャガチャガチャと完成。しかして運行、ギッコンバッタンからすぐにギコバタギコバタ……腰にくる走行。しかし楽にブレーキを踏めるのが頼もしい。神経をすり減らさなくてすむし、クラッチの左足、アクセル加減の右足、やはりチェーンを巻いてしまったほうが疲れなくてすむ。腰には倍以上「くる」けれど。
とにかく気分は安心という状態で街へ走り出ればやはりね、いつもの倍以上の渋滞。まあこんなもんだろうと思う間もなく無線が鳴る。いつもはなしのつぶての無線機、こんな日に限って鳴りやがる。沖野までどのくらいかかりそうですか?ときたもんだが、んなこたあ走ってみなけりゃわからない。30分ぐらいですかと訊かれりゃあまあそんなもんすかねと答えるしかない。実際、30分もありゃあ大丈夫だろう。
などと高をくくってバイパスへ出たものの、ありゃりゃりゃ、さっぱり進まんのね。でもまあ30分もありゃあ……いや、ダメだ、とガードレールの切れ目から側道へ。案の定、パイパス本線はどこまで行っても止まったままの車両。ズルして正解。信号の手前でいちいち本線へ戻り、渡ると再び側道へ、を繰り返し、おお、優秀乗務員、30分と言わず20分で到着。これまで十数回はお乗せしているS氏、「ああ、運転手さんでよかった」とうれしい一言。混んでいるのはわかっているが急いでいる、そんな時に慣れた乗務員だとやはり安心らしい。気分よく発進。「チェーン巻いてるんでちょっとうるさいッすけど」
そんな最初のお客、いつもなら20分で着くところが45分。ほとんどすべての行程が大渋滞だったのでチェーンのうるささなどまったく発生せず。下ろして100メートルも行かないうちに次のお客、「八本松まで」、これまたチェーンのまったく鳴らない走行で30分。
一日中とにかく大渋滞。こんな日に楽なのは急ぐ必要のないこと。急げったって急げないからね。究極だったのは夕方5時頃の北目町通りから長命ヶ丘まで。行程中の9割がタラタラ走行。いやいやいろんなお話を聞かせてもらいました。高校の我が28年先輩だということだったが、「後輩です」とは言えなかったね。以前、「○高出身」だと言ったらまったく信じてもらえず、「何年卒だ?」などと訊かれたぐらいにして非常に不愉快な気分になったことがあったしね。まあ、たしかにあの高校を出てタクシー乗務員なんてやってるのは俺ぐらいなもんだろうが。
深夜一時、もう疲れきって連坊の某ビルの前で残業帰りの客を待ってたんだがね、どうやらもう出てこないって感じ。まいったなあ、最後は一時間のロスで終わりかあ、とか思ってたら無線機から声、「チェーン巻いてる車ありましたら呼び出してください」。いつもならしゃしゃり出たりせんのだが、一時間のロスがいかんかった。「は~い、巻いてます」。「市役所の前、北向きで……」。
チェーンを必要とする最後の客ははてさて八木山か、住吉台か、はたまた古川?カクタ?などとそこまで夢をふくらませてはおらんかったけれど、台原と言われた時はちょっとガックシ。だってわざわざ連坊から飛ばしてきたんですぜ。などと少々ブルーだったのも束の間……バタバタバタバタ!!!
切れたんである。チェーンが。
ははは、台原でよかった。