25年――四半世紀 | 愛と平和の弾薬庫

愛と平和の弾薬庫

心に弾丸を。腹の底に地雷原を。
目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

 25年前の今日だったんだ、と思い出す。昼のワイドショーだったから、ほとんどこの時間だ。と思ったところで気づく。いや、明日だ。日本時間の12月8日、まだ彼は殺されていなかった。明日のほぼこの時間、俺は彼の死を知らされたのだ。25年前。だったら俺は21才。そうか、あの時、俺は21才だったのだ。

 バイト先の控え室の14インチ、厨房の人が何気なく付けていたテレビ、午後2時、ワイドショーのおやじが開口一番、深刻ぶった顔で「元ビートルズの……」まで言った瞬間、俺の頭の中はとんでもない言葉で埋め尽くされた。ポールと言ってくれ!リンゴと言ってくれ!ジョージと言ってくれ!ジョンとだけは言わないでくれ!

 しかし俺にはわかっていた。いかにも悲痛な面持ちのおやじが言い出しそうな事柄の当事者(被害者)の名前はジョン・レノン以外ではありえない。そんなことはわかっていたのだ。だから尚のこと必死で一瞬のうちに俺は唱えたのだ。「ポールと言ってくれ!」、と。

 暗殺だ。そう思った。アメリカ政府に亡き者にされたのだ。その思いは今なお変わっていない。マーク・チャップマンとかいう男の個人的な犯行だなんて、何度言われたって俺は信じない。アメリカ政府に洗脳された男が拳銃を持たされてダコタアパートに向けて放たれたのだ。根拠は何もない。でもこの「事実」は俺の中で一生変わらない。

 第一報として報じられたワイドショーの一こまを見終えると俺と金子さんはビラ配りに外へ出た。近所のマンションを回りながら、「これから俺はどうなっていくんだろう」と思っていた。海外で有名ミュージシャンが殺害されたからと言って、俺の人生がどう変わるものでもないだろうに。「俺の人生はどうなっちまうんだろう」。足元がフワフワしていた。

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