「タクシードライバーは眠れない~規制緩和・過酷な競争~(再放送)」
大阪のタクシードライバーの過酷な現状。
にもかかわらずさらなる「過激な毒」で生き残ろうと画策する経営者。
エピローグ ~一運転手(50代)の言葉、そのまま~
「こういう横断歩道ですわ……。
あのう、家帰って、ちゃぶ台を両方ではさんで、ごはんを食べとる時に家内が、
マッチャン、今日、あのう、道の横にきれいな花が咲いとりまして、花を見ようと思ったら、タクシーがスーッと寄ってきたと。
わたしら、前方に「ああ、これはお客さんやな」と思ったらスッと寄って行きますねん。
それがタクシーの運転手の習性ですねん。
そして、家内が道ばたのきれいな花をちょっと見ようと思ったらタクシーが寄って来たって言うわけですわ。
それで家内が、わたしのことマッチャンマッチャンとかマツノスケとか言いますけどね。
マッチャン……、マッチャンもこないして、人を見たら寄ってくるんやなあと思ったら、涙がポロポロ流れてしょうがなかったって言うわけですわ。
ああ、この女だけは悲しましたらいかんなあ、っていうのを、わたしのひとつのバイタリティーを出す、元気の素ですねえ。
人間、この世に生まれて、そういうのがわかっただけでも、もういいんじゃないですかねえ。
もう、バブルがはじけようが、規制緩和で国が好き勝手しようが、あのう、俺は俺で力強く生きるんだっていうのを、失わなかったらいいんじゃないですかねえ。
あ、まだ真っ直ぐでよろしいですか」