父性喪失の時代とか言われてもう何百年たってしまったことでしょう。うん、たしかにそうなのかもしれないね、などと知ったような頷きを知らず知らず何十回繰り返してきたことでしょう。所詮は世の中のこと、他人で構成される世界でのこと。だって俺にはのっけから「週に一回帰ってくるだけのパパ」しかおらなかったんだもん。
と、なにやら自嘲気味に実は得意がっていた日々なのだが、太田光がNHK教育でやっている向田邦子に関するテレビを見ていてふと気がついた。
ああ、我が伴侶もそうなのだな。
そうなのだ。我が家夫婦は二人揃って、世間一般に掃いて捨てるほど存在している父親というものをほとんど知らないのだ。持たなかったのだ。
ああ、これってあんがい幸せなことなのかもしれないなあ、と、思わず微笑んでしまったお昼時。
硬質な価値観に侵されずに生きてきました。