『熱中死作戦』は6月下旬から7月下旬まで、1ヶ月強の期間。

朝日測量社長としては、決着がつくまでが予定のはずだったが、予期せぬ出来事の為、唐突に終わりを告げる。

私が炎天下の現場で休憩も取らず重労働している間に、朝日測量社長が共犯者と奸計をめぐらせ、偽造書類を使い、私をトンネル会社に転籍し、亀井測量部長の狂ったような嫌がらせ行為で第一測量設計の事務所へ追いやったのが、6月下旬。

その時、既に室内の最高気温は35度、後の1ヶ月間でついには40度を超えるに至る。

事務所内での作業は主にパソコンでのデータ入力作業。

カーテンも閉められない事務所内の作業スペースは、日光の直射とパソコンの排熱で、日陰にある温度計よりも確実に3~5度、気温が高い。

通常40度を超える環境にいる場合、成人で一時間あたり1㍑の水分補給が必要とされる。

熱中死回避の為、はす向かいにある酒屋の自動販売機で水分補給を図った訳である。

五台ある自動販売機の中で、烏龍茶、緑茶、麦茶、スポーツドリンクを中心に、1日3~5㍑程度購入。

1ヶ月で5万円ほどの出費となった。

熱中死回避の為の水分補給とはいえ、3㍑を越えたあたりから胃腸が悲鳴を上げる。

冷た過ぎない飲み物や、炭酸飲料などで飲み口を変えるとまた水分補給ができるようになる。

水分補給が文字通りの生命線であるから、胃腸が悲鳴を上げるくらいは我慢のしどころである。

しかし、この程度の水分補給では熱中症を完全に回避することはできない。

深夜残業後、帰宅してからが本格的な熱中症との戦いである。

帰宅時には、体温が38度台まで上昇しており、放置すればかなり高い確率で死亡する。

死因はたいていの場合、多臓器不全、御愁傷様である。

ここからが本番、アイスノンの出番だ。

脇の下のリンパ、首筋、心臓、時に鼠径リンパ。

感覚が無くなるまで、徹底的に冷やす。

体温が37度を下回れば、先ず一安心だ。

しかし、万全の態勢で熱中死回避を行っていたにも拘らず、ついに『その時』がやって来てしまう。

………続く
朝日測量から第一測量に下請けに出される仕事量は、4人分+α。

トンネル会社社長の仕事量は『0』、損保代理店も同じく『0』、ダミー社員は残業はするものの深夜残業や休日出勤などはしないので1.3人分程度。

残る私が要求される仕事量は、最低ラインが2.7人分という事になる。

月185時間が定時間労働として、約500時間/月が最低ラインのノルマである。

しかし、結果を先に言うと500時間労働ノルマは達成出来なかった。

月30日勤務、1日17時間弱の労働は、1日3時間を熱中症の治療に充てざるを得ない状況から考えても不可能である。

達成できないとなると、連日、鬼の様な指令と罵詈雑言が朝日測量社長から浴びせられることになる。

トンネル会社社長に仕事を手伝わせるように、朝日測量社長に何度も要求したが、前に挙げた理由もあり、「よその会社の事は知らない」と逃げられてしまう。

トンネル会社社長は、出勤はするものの、親会社公認の「パチンコ三昧」。

損保代理店に手伝われると、かえって迷惑である。

炎天下の現場を終え、炎天下より暑い事務所内での作業の連続。

冷房を入れるように、朝日測量社長に繰り返し要求したが、経費節減を理由に却下。

トンネル会社社長に頼まないのは、トンネル会社社長は「鉛筆一本」買うにも、親会社である朝日測量社長に許可を得る必要があるから。
そんな人に頼んでも無意味だ。

あまり、しつように要求されることに業を煮やしたのか、トンネル会社社長に命令してエアコンの取り付け。

以前エアコンが設置されていたレールに、トンネル会社社長自らがエアコンを張りつける。

張りつけるという表現を使ったのは、このエアコンがトンネル会社社長の奥さんがパートで勤めている「リサイクルショップ」の廃棄品だから。

ただの「粗大ゴミ」である。

トンネル会社にとって好都合だったのは、以前のエアコンの室外機がそのまま放置されており、見かけだけは冷房完備に見えることである。

事務所以外の所で熱中死すれば、会社が原因とは思われない。

その間、私は「熱中死」や「過労死」が襲い掛かることと格闘していた訳である。


…………「熱中死」「過労死」の回避方法については、また明日…
第一測量設計は、「作戦」が始まった時点で総勢四名。

トンネル会社社長、損保代理店、籍だけを置くダミー社員そして私である。

この会社は、トンネル会社とはいえ存続しているので、稀に伊勢崎市発注の業務で入札メンバーとして名を連ねることはあるが、トンネル会社になって以降単独での仕事の受注は「ゼロ」である。

トンネル会社社長の一人会社であった一年半ほどは、朝日測量の現場の手伝いとして、月1日程度働いていたのみである。

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総勢四名の会社になって以降は、朝日測量の仕事の下請け。

危険度の高い順に、下請け業務が朝日測量からもたらされる。

第一測量設計の存在目的を考えれば、危険度の高い業務を恒常的に請け負うことは、常に社員が不測の事態に陥る危険があるということ。

不測の事態が起っても、自ら望んで下請けを受注したと、トンネル会社に責任を押し付けられるので、極めて合理的な方法である。

現場が、「崖」を這いながら行うものであったり、自衛隊の基地内、米軍の弾薬庫であったりするのはその為である。

《仕事の分担》

基本的に、トンネル会社社長と損保代理店は第一測量設計の仕事はしない。

トンネル会社社長は、朝日測量からの下請けの仕事である「水質調査(月二回)」の同行のみを行う。

この仕事中、草木ダムで「突き落とし」を行うのが唯一の「仕事」である。

この他は、朝日測量の仕事の手伝いを、多いときは週1日程度行う。

損保代理店は、偽造書類で私を第一測量に転籍させる犯罪に協力して以降は、特に仕事らしい仕事はない。

朝日測量からもたらされた下請け仕事は、ダミー社員と私の二人で行う。

建前上、4人の会社なので、ノルマは4人分。

トンネル会社社長と損保代理店は、朝日測量社長から仕事を手伝わないように命令されているので、現場や事務的作業が繁忙を極めていても手伝うことは無い。

………また明日