脳出血で死亡した執行役員の男性が労災保険上の「労働者」に該当するか否かが争われた訴訟で、5月19日、東京地方裁判所で、「労働者」に該当すると判断し、労災保険の不支給処分を取り消す判決が言い渡されました。
ニュースソースは↓
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3EBE2E0E48DE3EBE2E7E0E2E3E39180EAE2E2E2;at=ALL
裁判長は、
「一般従業員時代と執行役員時代の業務実態が変わらなかったこと」
「一定額以上の取引では本社の決済を仰ぐなど指揮監督を受けていたこと」
を認定し、毎月の経営会議に出席していても、最終的には取締役会で意思決定していたため、経営会議に出席したことをもって、当然経営者ということにはならないと判断したようです。
ただし、労災保険の不支給処分の取り消しと労災認定は別途の問題のため、当該労働者は、別途、労災認定を求めることとなります。
すなわち、一般には分かりにくいのですが、労災不支給処分を取り消す = 労災が支給される
ということにはならず、支払われないことが取り消されて、再度、支払ってもらうよう要求する必要があるのです。
さて、執行役員とはどのような地位なのでしょうか。
実は、執行役員という規定は法律上明記されておりません。
執行役員とは、会社経営と業務執行を明確に分けることを目的とした場合、会社経営の責任者が『取締役』
業務執行の責任者が『執行役員』となると言われております。
これだと、執行役員も取締役と同様の責任者である以上労働者には該当しないとも考えれますが、
執行役員は取締役ら(取締役会)で決定したことを忠実に実行するだけと考えれば、会社の指揮監督下にあり、労働者のようにも考えられます。
したがって、『執行役員』という肩書きで判断するのではなく、労働実態を良く吟味して「労働者性」を判断することになるのですね。今回の判決も同様に述べております。
一時期前に、『名ばかり管理職』という問題が世間を騒がしましたが、今回も同様の問題であり、『名ばかり執行役員』という言葉が世間を騒がすことになるのですかね??