話は少し過去に戻る
僕が21歳の時の話だ
仕事中の交通事故で
足を複雑骨折した為
長期の休職をすることになった
自宅で療養していたが
足以外はなんの問題もなかったので
暇な毎日を過ごしていた
専門学校時代の友達も
見舞いに来てくれたりした
その中の一人が亜子だった
彼女は
仕事が休みだった
毎週木曜日になると
必ず家まで来てくれた
当時亜子には
高校時代から付き合っている彼が居た
なので僕は
一人で毎週毎週
男の家に来ても大丈夫なんか?
と尋ねた
すると彼女は
〇〇が動けなくて困ってる
話し相手にもなれるし
あたしも楽しいし
こう答えたのだ
それからというもの
僕は亜子が来るのが
楽しみで楽しみで
仕方なかった
木曜日の昼過ぎになると
2階の窓から
亜子の車が家に近づくのを待っていた
ご飯を食べに行ったり
カラオケに行ったりもした
そして勘違い野郎の僕は
亜子に自分の気持ちを伝えるという
無謀な行為を行なってしまったのだ
好きだと言われた亜子は
泣き出した
〇〇のこと好きやし
一緒に居るの楽しいけど
それ以上は何も言わなかった
要するに
友情と愛情は別だと言う事だ
そんな過去があったことを
友人数名は知っていた
だから僕と亜子が
今も繋がっていると
思ったのかも知れない
みんなに色々と言われた亜子は
あの頃のように涙を流していた
その時はどんな事を
思っていたのだろう
僕はその瞬間数年ぶりにキレた
正直言うと
何をしたのか余り記憶がない
酒が入っていたのもあったし
昔好きだった人が泣いているのが
どうしても許せなかった
ただ一つだけ覚えているのは
亜子の悪口めいたことを
言っていた一部の人間に対して
胸糞悪いし
金払わんでいいから
さっさと出て行ってくれ!
と言った事だ
まさか僕がそんな事を言うとは
思わなかったのだろう
普段友人に怒鳴ることなど
まずなかったからだ
連中は直ぐに謝って来た
〇〇ごめん
言い過ぎた
謝るのは
泰文と美貴と亜子に対してや
俺ちゃうやろ!
こうして
楽しかった筈の同窓会は
友人の心無い一言によって
一瞬にして修羅場と化した
そして不倫は悪という
認識がさらに
深まってしまった
泰文と美貴の
これからは一体
どうなってしまうのか
怒ってくれてありがとう
そう言った亜子とは
その日以来連絡が
取れなくなった
外に出ると
激しい雨が降っていた