えっ!?

なんで!?



亜子は僕の肩を掴み

立ち上がるのを止めた





これ以上放っておいたら

えらい事になるぞ!





まだ大丈夫

美貴は興奮してるように見えるけど

冷静やから






でもあの感じやったら

別れて下さいって

言いかねんと思うけど





美貴、あたしに言ってたねん


奥さんは間違いなく

慰謝料要求してくると思う


それは最初から払うつもりでいる


でも泰文くんの

奥さんに対する愛情が

無くなってる事を

執拗に言えば

向こうはイラついて来る筈


そこであたし

一気に責めるつもりやから


そやし

絶対に止めんといてな







美貴は

この状況を

見越していたと言うのか






奥さん、

泰文くん言ってました


もう疲れた

帰りたくないって


家に夫の居場所を作ってあげるのが

妻の役目やと思います


違いますか?







あんたに何が分かるん!?


うちにはうちのルールがある


あの人もそれに納得してる


だから結婚したねん!






でも、出来ちゃった婚ですよね?


仕方なくした結婚で

幸せになれますか?






おいおい、

少し挑発し過ぎちゃうか?



泰文の嫁の肩は

震えていた


目も血走り

今にも殴りかかりそうだ





こういう話し合いは 

興奮した方が負けだ


それを計算した

美貴の作戦なのか






泰文くんを手に入れられるのなら

私は全てを手離しても良い覚悟でいます






その瞬間

嫁は伝票をテーブルに叩きつけ

こう言った



とりあえず今日は帰ります

でも絶対に別れませんから!!!




はい

私も今日直ぐに返事を

貰えるなんて思ってません






ふと周りを見渡すと

みんな

美味しそうに

ケーキを食べ

コーヒーを飲んで

楽しそうに話していた


まるでそのテーブルだけが

異空間のようだった





こうして二人の戦いは

一旦幕を閉じた







美貴大丈夫?


亜子が声をかけた



うん、なんとか


彼女は疲労困憊の様子だったが

何故かその表情は満足そうだった