■ファラオの密室
■作:白川尚史
紀元前1300年代の古代エジプト。
神官であるセティはミイラとなり、冥界の裁判を受けることとなったがしかし、自身の心臓が欠けているために裁判は受けられないと知る。
欠けた心臓を取り戻すため、3日間という期限を得て、セティは現世へと戻るがーー
『このミステリーがすごい』大賞受賞作。
古代エジプトが舞台の、死者の蘇りが当然の如く存在する特殊設定ミステリー。
そう、セティが戻ってくるのは古代エジプトなのですよ。
登場人物も基本は古代エジプト人。日本人も現代人もなし。
当然、その当時の価値観、死生観が物語の根幹に位置してるわけで、「なぜこの舞台なのか」の説得力にうなりました。
いわゆるファンタジーだけど、冒頭から流れるように死者蘇生までの下りを描かれてるので、世界のルールに納得し、かつ物語世界に浸れる仕様なのが好印象なのです。
なぜセティの心臓は欠けていたのか。
心臓と共に記憶もかけているセティ自身が、タイムリミットの中で謎を追うのも、その謎が解けない場合のペナルティにも緊張感があり、テンポの良さと物語の引きの強さを感じた次第。
その謎と同時進行で(時間軸はいささか前後しつつ)別の事件も起きているのもまた良き。
「信仰」をベースとしているからこそ、見えるものも見えないものも存在していて、視点も面白さもプラスされてます。
なぜ事件は起きたのか、その周囲の言動、動機、トリックのどれもこれも、舞台装置と連動し、意味を持って回収されていくなかで、「ああ!そういうこと!?」となる瞬間にもうなりつつ。
一気読み必至の特殊設定モノかつ密室モノでした。
余談。
実はこの作品のあらすじを読んだ時、「現世」を「現代」と読み違えてまして。
数千年前のミイラが現代に甦り、過去の事件を探る歴史ミステリーなのかと勘違いしたことをここに告白しておきます。
この手の勘違いをするたびに、かつて学校の先生が『タイトルだけ見てどんな物語が想像し、実際とのギャップを知る遊びが楽しい』的なことを言ってたのを思い出します。
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