看護師で心理師な私が悪役令嬢に転生!?〜メンタルケアの知識で破滅フラグをへし折ります〜
▶︎目が覚めたら乙女ゲームの悪役令嬢だった件
看護師歴15年、精神科歴6年、夜勤明けの今日この日、この度公認心理師の資格を無事にゲットした。
月に8回20時間を超える夜勤をこなし、残業ありの日勤と研修もこなし、寝る間も惜しんで知識を詰め込みに詰め込んで、ようやく得られたふたつ目の国家資格だ。
頑張ってよかった、死ぬ気でやってよかった。
明日からは3ヶ月ぶりの連休も始まる。
封印していた大好きな乙女ゲームもこれで解禁できるというもの。
やりこみ要素満載なのに、軽く全キャラのルートを一周して、そのまましまい込んでいたのだ。
各ルートのバッドエンド、トゥルーエンド、隠しシナリオ、おまけシナリオ、その他もろもろが手づかずのまま。
さあやろう、今すぐやろう、心置きなくやろう。
合格を公式サイトで確認し、寝る間も惜しんでいそいそとゲームの準備に取り掛かった私の視界は、その直後に暗転した。
あ、やばい。
それが私の今生最後の思考となった。
*
小鳥のさえずりを耳にしながら、優雅な朝をふかふか豪華なベッドの上で迎えました、おはようございます。
「お嬢様、お目覚めになられたのですね」
侍女のアンヌが驚いた顔で慌てながら私の元へやってくる。
頭が痛い。
物理的にズクズクと疼くような痛みをこめかみに感じながら、私は私自身を確認する。
サラリとこぼれ落ちる金色の巻き毛に、上質なシルクのネグリジェ。
アカギレどころかささくれのひとつもなく、手入れの行き届いたキレイな白い手。
寝不足とも過労とも無縁のすべすべの肌。
連続夜勤でボロボロな三十路にあるまじきこの状態。
なにより、私の中の記憶が告げる。
私の名前は、ルシエラ・フォン・ルシフェル。
ルシフェル公爵家の長女であり、齢10歳にしてこの国の第一皇子の婚約者たる身だ。
そして、やり込み要素満載乙女ゲームにおいて、ほぼ破滅ルート一択しかない悪役令嬢でもある。
夢じゃないなら、これはいわゆる異世界転生。
ネット小説で山ほど見た展開。
私は前世の記憶に目覚めたのだ。
だって、ルシエラとしての記憶も、ちょっと混乱はありつつ10年分しっかりとあるもの。
プレイヤーがプレイヤー(役者)になるとか聞いてない。けど、なってしまったものは仕方ない。
ここで気を失ったら元の世界に戻れるのかな、なんてちょっと思ったりもしたけれど、多分それはただの現実逃避だ。
「お嬢様」
不安げなアンヌの声に、反射的ににっこりと笑顔を向けていた。
「ごめんなさい。少し寝ぼけていたみたいね。でも、もう平気よ」
「お身体はもうよろしいのですか?」
「ええ、すっかり。心配をかけたわね」
職業病、あるいは看護師スイッチ。
相手を安心させるための笑顔と方便がつらつらと口をついて出るのにまかせて、とりあえずは現状確認と情報収集につとめよう。
高熱で三日三晩うなされていたのだと訴えるアンヌの言葉を聞きながら、これは、どのエピソードにあたるのだろう、と考える。
学園が舞台となる『ゲーム本編』はまだ始まってないにしろ、そこにつながるピースではあるはず。
選択肢を誤れば、私は断罪されるタイプの悪役令嬢だ。
破滅ルート一直線とか冗談じゃない。
目標は幸せな第二の人生。
問題点を把握し、アセスメント、目標に向けた具体策を立て、実践あるのみ。
「お父様とお母様にもご挨拶に伺いたいわ」
さて、まずは家族関係から把握していこうかしら。
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公認心理師の試験勉強中に思いついたネタ。
知識をつめこんでいたときに、「物語風に落とし込んでしまえば、知識として定着するんじゃない!?」と。
半ば現実逃避気味に設定を考えてました。
試験に向けて必要なこととして、現時点では、『どれだけ自分の中に事例(経験)が存在しているか』かなと思っております。
試験に出そうな症例などをもとに、せっかくなので断片的にでも書けたら続けてみたい。
何でも物語にする,物書きの業の深さも含めて笑って見守っていただければ幸いです。