高齢のルルが全身麻酔や大きな手術に耐えられるのか。

それだけでも十分悩んでいた私に、もうひとつ大きな問題がありました。

治療にかかるお金です。

最初、いつもお世話になっているペットシッターさんに、おおよその治療費を聞いてみました。

「最初の検査で5〜6万円くらい。手術になったら20万円くらいかと…」

そのくらいなら、私のお金でも何とか出せる。

そう思っていました。

ところが、実際に病院に詳しく話を聞いてみると、想像していた金額とは全然違いました。

詳しい検査だけで、約10万円。

そして手術をするなら、

60万円以上。

さらに、がんは手術をすればそれですべて終わり、というわけではありません。

目に見える大きな腫瘍は手術で取ることができても、とても小さながん細胞まですべて取り切れるとは限らない。

徹底的に治療するのであれば、手術のあとにも追加の治療が必要になる可能性があると説明を受けました。

抗がん剤治療をする場合、私が聞いたプランでは全部で7回ほど。

1回につき、約6万円。

それだけで約42万円です。

検査に約10万円。
手術に60万円以上。
さらに、その後の治療。

全部合わせたら、

100万円を超えるかもしれない。

想像していた「20万円くらい」とは、まったく違う金額でした。

そして、もうひとつ私を悩ませたのが夫のことでした。

夫は、ルルの手術そのものに反対していたわけではありません。

以前相談したときにも、

「手術したいなら、すればいいんじゃない?」

と言っていました。

ただ、そのあとに続いた言葉は、

「でも、お金は出さないよ。したいなら自分で出せばいいんじゃない?」

というものでした。

だから私は、病院で聞いた具体的な手術費用を夫には言いませんでした。

60万円以上かかることも、その後の治療まで考えれば100万円を超える可能性があることも。

言ったら、どんな反応が返ってくるんだろう。

それが怖かったからです。

そして私は、

手術をするなら、その費用は私が全額用意しよう。

そう考えました。

でも、夫の言葉で私が一番つらかったのは、お金のことではありませんでした。

手術をしなかった場合、がんが進行すれば、今は元気なルルにもいろいろな症状が出てくるかもしれない。

その話をしたときです。

私は、症状が出たらその都度治療をして、少しでも苦しくないようにしてあげたいと思っていました。

けれど夫は、

「何もしなくていい」

と言いました。

その言葉が、私にはとてもショックでした。

15年近く前、元野良猫だったルルを保護して、それからずっと一緒に暮らしてきました。

初対面の私の膝に躊躇なく乗ってきた、人懐っこくて甘えん坊のルル。

息子が生まれる前は、一緒に寝ていました。

今も我が家のペットの中で一番食欲旺盛で、がんかもしれないなんて信じられないくらい元気です。

そんなルルに、

何もしないという選択を、私はできませんでした。

治せる可能性があるなら、治してあげたい。

たとえ治すことができなくても、痛みが出たら和らげてあげたい。

苦しくなったら、少しでも楽にしてあげたい。

ただ、それだけでした。

だから私は、

「私のお金でルルを助けよう」

と思いました。

でも現実には、60万円以上の手術費。

その後の治療まで考えれば、100万円を超えるかもしれない。

「助けたい」

その気持ちは変わらない。

それなのに、目の前に大きな金額を突きつけられると、

本当に手術をするのか。
高齢のルルに大きな手術を受けさせることが、本当にこの子のためなのか。

何度も何度も迷いました。

そして、そんな私の目の前で——

当のルルは、今日も元気いっぱい。
ご飯をモリモリ食べていました。

その姿を見るたびに、

「本当にこの子が、がんなの?」

そう思ってしまうのでした。