ゴールデンウィークを目前に控えたある日、かかりつけの動物病院から電話がかかってきました。


「尻尾のしこりは良性でしたが、鼠蹊部(足の付け根)の方は悪性でした。場所からして、乳腺ガンの可能性が非常に高いです」

受話器の向こうから聞こえる先生の言葉に、頭が真っ白になりました。


幸い、病院は家からすぐ近くにあります。

電話を切ったあと、私はいてもたってもいられなくなり、吸い寄せられるようにすぐ病院へと向かいました。


診察室に入ると、先生は当然のように「手術をする前提」で今後の話を始めました。

けれど、私の心には強いブレーキがかかっていました。

いつもお世話になっている信頼できるペットシッターさんから、「高齢の猫ちゃんだし、全身麻酔のリスクもある。むやみやたらに手術に踏み切るのはよく考えた方がいい」とアドバイスをもらっていたからです。


その思いを正直に伝えると、先生は「じゃあ、どうしますか?」と、どこか不思議そうな表情を浮かべました。

手術のリスクは怖い。でも、このまま何もしないのも違う……。


悩みに悩んだ末、セカンドオピニオンとして、より詳しい「がん専門の動物病院」を紹介してもらうことにしました。かかりつけ医よりも専門の病院の方が病状について深くアプローチできるはずだし、もし最終的に手術を選択することになったとしても、専門の先生に執刀してもらえる方が安心だと思ったからです。


「すぐに予約を取って、診てもらおう」

そう思って連絡を入れたものの、突きつけられたのは「最短で約1ヶ月待ち」という非情な現実でした。ガンという進行が怖い病気を前にした1ヶ月は、あまりにも長すぎます。


目の前が暗くなるような思いの中で、さらに追い打ちをかける出来事がありました。

一番の理解者であってほしかった夫に、ルルがガンかもしれないこと、そして手術をするかどうかの相談をしたときのことです。

夫から返ってきたのは、あまりにも冷たい言葉でした。


「あまり高額になるようなら、お金は出せないよ。まぁ、寿命なんじゃない? そのまま野良だったら、もうとっくに死んでるんだし」



――すごく、ショックでした。

15年前、私たちの家族になってくれたルル。家の中でずっと一緒に過ごしてきた愛おしい家族なのに。野良だろうが家猫だろうが、今ここに生きて、私たちにたくさんの癒やしをくれているルルの命の重さは変わらないはずなのに。

お金のこと、そして「寿命」という一言で片付けられてしまった悲しさと悔しさで、胸が張り裂けそうでした。