「頑張ったね」という魔法の言葉のほかにもう一つ、私には精神的に楽になるための方法があった。

それは、私自身の自己肯定感を高めることだった。

 

娘が拒食症の時にお世話になっていたカウンセラーさんから教えてもらった、

「小さい自分に語りかける」

という方法を試すことがそのきっかけとなった。

 

そもそもは、私が精神的に楽になることが娘の病の回復にもプラスの影響があるという趣旨からのアドバイスだったように思う。

「小さい自分」とは心理学で言うところのインナーチャイルドのことなのか、私にもインナーチャイルドがいるのかと幼少期を振り返ってみると思い当たることが何となくあった。

 

けれど、教えてもらった当初は娘がどん底の状態で、何とかして栄養を摂り、命の危険から脱しなければならないと必死に模索している毎日だったので、

「小さい自分って…、対象もないのに語りかけるなんてできない」

と、試みてはみたがまったく理解できずにいた。

しかしながら、娘の回復のためにできることはすべて実行するつもりでいたので、頭の片隅にはいつもその教えがちらついていた。

 

それから数年後、ふと気づいてみると、私は声に出して私自身に語りかけていた。

小さい自分ではなく現在進行形の自分に。

 

最初は日常に起きた出来事を声に出して起承転結の形で語りかけ、結は必ず自分をなぐさめ肯定するポジティブ思考の言葉でしめくくるようにしていたと思う。

慣れてくると、結の言葉を自ら声に出してしめくくらなくても、

「すごいね、それでいいんだよ」

と、励まされているような気持ちを感じることができるようになり、さらに語りかけることが習慣的になると、無意識にいつも自分を肯定する思考になっていることに気がついた。

 

まるで一人二役のお芝居をしているようで不思議なのだが、いつの間にか「私は大丈夫」と感覚的に思えるようになり心が楽になった。

自分がとても好きになり、自分自身を大切にする意識も実感できた。

この歳にして初めて、私が私自身を大切にすることの温かい心地よさを体感したのである。

 

これもまた、娘の病から得たことの一つとなった。