夫は一つ年上なので昨年が還暦だった。

娘は遠方に住んでいるため、義母を誘って3人で還暦祝いに外食をした。

本来は還暦記念のプレゼントも用意するのだろうが、そこまでの気持ちは私にはなかった。

 

同じ町内で一人暮らしをしている義母はいくらか痴呆も出てきており、この先どうなるのか不安もあるが、この日は久しぶりの外食だったこともあり、息子の還暦はそれなりに感慨深いものもあるらしく、ほとんど一人で喋っていた。

 

数日後、夫の衣類を収めるためクローゼットの扉を開けると、還暦祝いに贈られたらしい赤いちゃんちゃんこが吊るしてあった。

会社で祝ってくれたのだろう。

そうした嬉しい報告さえも交わさない冷えた夫婦関係になっていることを改めて痛感したが、

「へぇ~、お祝いしてもらえて良かったじゃない」

と私は素直に感じて扉を閉めた。

 

そして今年、私の還暦。

なんと、まったくスルーされたのである。

 

自分の還暦は赤いちゃんちゃんこまで着て祝ってもらっているのだし、私は義母を誘ってお祝いの食事会もしていたので、当然私の還暦の時も外食くらいはするつもりでいるだろうと勝手に思い込んで誘われるのを待っていたが、至って何事もない日常で、忘れているのか無視しているのか…

てっきりそのつもりだった私は肩透かしを食らい、

「つくづく私も能天気な人間だなぁ」

と我が身を情けなく哀れに思った。

 

結婚して34年。

妻の人生の節目を祝うどころか、あっさりスルーできるとは…

あんなに好きで結婚したのに、いつからこうなってしまったのだろう?

こんな人ではなかったはずなのに。

さすがに寂しかった。

 

と同時に、

「離婚しようかな」

という気持ちがむくむくと心に湧いてきているのを感じた。