離婚の話し合いをした数日後に夫は娘にメールをして食事に誘った。
娘にはあらかじめ話しておいたので連絡が来たことに驚きはしなかったようだが、なにせ23年間話したこともない父親なので、約束の数日前からだいぶ緊張していたようだった。
娘が焼き肉をリクエストするとなかなかにいいお店を予約していたそうで二人で会食した。
どうして娘が焼き肉をリクエストしたのか少々不思議ではあるが、その理由は聞かなかった。
夫は手紙を無視したことについて素直に謝ったとのこと。
部屋中探したが手紙は見つからなかったと言っていたらしい。
娘は当初700万円を何に使ったのか聞くと言っていたし、これまでまったく自分に向き合ってこなかったことも訴えると言っていたのに、終わってみたらさほど悪い印象はなく、むしろ社長をしていただけあっていろいろなことをよく知っていて教えてくれた、お母さんのことを家政婦のようには思っていない、などと私の予想とは大違いのことをメールしてきた。
はっ?唖然…
夫にも娘にも「何なの?」という思いが渦巻いた。
が、冷静に娘の今後の人生を考えると、娘にとっては父親との冷たかった関係に少しばかり光が差し込んだ感があってよかったのだとは思う。
ある意味、娘は生まれて初めて父親に向き合えてもらえたことが嬉しかったのかもしれない。
おそらく娘の心に染み込んでいた暗い闇の部分がいくらか晴れたのではないだろうか。
けれど、夫からの報告は私には何もない。
まさかたった1回会食しただけで娘にこれまでのことを許してもらえ、離婚も白紙になると思っているのか、だとしたら大間違いだ。