里帰り出産で両親にお世話になり、38歳という高齢出産ではあるものの元気に娘が生まれてくれて、諦めずに不妊治療を続けて良かったと心の底から安堵と幸せを感じた。

お待たせした分、親戚はじめ多くの友人知人が娘の誕生を我がことのように喜んでくれ、娘の成長を楽しみに明るい未来を想像した生活が始まった。

 

ところが、娘の誕生と同時に家族帯同で地方転勤となり、夫は出張続きで私は一人で育児をしなければならない状況となった。

誰一人知る人のない初めて住む地で、手助け皆無で新生児を育てることは想像以上に大変で、当初はストレスから失声症で全く声が出なくなった。

 

けれど、娘の成長は喜びであり、積極的にサークルに参加するなどして友人もでき、地方都市での生活を楽しんでいたが、娘が3歳になる直前に転勤が終わって自宅に戻ってきた。

 

夫はそのタイミングで子会社に出向となったが相変わらずの仕事人間で、ほとんど在宅はなく私と娘はふたり暮らしの状態が続いた。

父親不在のこの環境が娘に何かしらの悪い影響があるのではないか、と一抹の不安を感じながらも穏やかに過ごしていた。

 

娘にとって私の実家は祖父母の家であり、従妹のいる楽しい空間となっていた。

弟家族は父親不在の我が家に代わり、家族というものを娘に味わわせてくれる機会となっていたので、時折泊りがけで滞在するのが私の楽しみでもあった。

夫は一人っ子のため、義父と義母もたったひとりの孫娘をとても可愛がってくれた。

 

潜在的には私と娘の心に暗いものが蓄積され始めていた時期かもしれないが、平和な日々であった。