永井龍男「黒い御飯」の挿絵 | *RoseLotus*

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油彩画、水彩画、パステル画(天使画)などを描いています。エンジェルリーディングもしています!大腸がん、子宮体がん、卵巣がんの経験を通して感じたことも書きはじめました。



月刊「致知」5月号、連載『人生を照らす言葉』(鈴木秀子先生)、今回のテーマは、永井龍男『黒い御飯』です。


100年前の日本の、決して豊かではない庶民の暮らしが描かれています。小学校入学のために、父や母や兄たちが貧しい中で、少年のために色々なことをしてあげる様子が描かれていて、何気ない日常なのに、なぜか涙が出そうになりました。


タイトルの『黒い御飯』というのは、お父さんがご飯を炊くお釜で少年の入学のための飛白(かすり)を染めたものだから、母親がお釜をいくら洗っても、炊いたご飯が黒くなってしまったのです。


でも、その黒いご飯に父親の愛情が感じられます。貧しさで小学校すら卒業できなかった工場勤めのお兄さんがカバンを買ってくれて、2番目のお兄さんがそれに名前を書いてくれました。


『そうして明治何年かの四月一日、母はいそいそした私の手を引いて小学校の門をくぐった。私はきっと、次兄の着古した縫い直したのを着、新しいごわごわの袴と、新しいカバンと新しいピカピカの帽子をかぶって、然し、傍の者から見た私の姿は、袴にはかれ、帽子にかぶられ、カバンに下げられていたに違いない。きっとその日は好い天気であったろう。』


このような描写があります。


入学式の服装というのは、どこかダブついていたり、変にピカピカだったり、着る本人たちは不安と期待で固くなっていて、親たちもここまで育った感慨と心配とが入り混じった、なんともいえない瞬間ですね。


さて、今回は少し描くのに苦労しました。いわゆる時代考証です。この時代の少年はどんな着物や帽子で、履物やカバンも、足袋を履いていたのかなどを調べるのは面白かったです。


もうすぐ4月、新入生がたくさん誕生しますが、時代は変わっても、親の思いは変わらないでしょうし、貧しい中で日々の幸せを見出していた100年前の人々の暮らしを知ると、今の私たちに色々思うところがあるかもしれません。


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