のろのろと、皆に付き添われて手術室に向かいました。
ご家族はここまでと言われ、娘たちとは別れました。これはなんと言ったらいいかわからない複雑な気持ちでした。
永遠の別れになることはないにしても、不安もいっぱい、お互いに色々な思いもありつつ、切ない気持ちや「がんばって」という気持ちや、様々な言葉にはならないものを双方抱えながら、「じゃあね」と言って別れました。
感情的になるのも束の間、案内された手術室はなんとも近未来的で、宇宙ステーションのよう。たくさんのお医者様がずらっと並んでいました。
マスクをしているので、お顔もよくわからなかったけれど、初診の先生はこの時もいらっしゃいませんでした。
麻酔科の先生も紹介され、全部で6、7人くらいいた気がします。チームでやると聞かされていましたが、本当にたくさんの先生たちに手術してもらうんだなと少し安心しました。
手術台に乗るように言われて、横になった途端、鮭のホイル焼きのような感じで、たくさんの手が出てきて、色々包まれたりされた気がするのですが、あまり覚えていません。
まな板の上の鯉、ことわざってすごいなとぼんやり思いました。
マスクに猫の毛がついている気がして、「マスクに毛が…」と手で取ろうとして、麻酔科の先生に訴えたのですが、みるみる麻酔が効いてきて、あっという間に眠ったようです。
私がやることは何もなく、すべてお医者様たちが頑張る時間でした。
今でも思い出すと怖さが出てきます。
その数時間、記憶も何もなく瞬間に思え、ただ真っ暗でした。