睡眠時間が少なくて済む人が羨ましい。
いや、眠りたくても忙しくて睡眠時間がとれなくて、がんばっている人を心から尊敬する。
自分は朝食を削っても睡眠を選ぶ、ぐうたらな人間だから。その罪悪感が夜更かしにつながり、ついつい昼夜逆転になってしまう。リズムは崩れ、なかなか修正できない。最近は翌日になる前に布団に入っても、眠れなくなってしまった。スマホが元凶なのはわかっているが。

そんな中で、たくさん夢を見る。
自分の日常や思考、他人の話などが影響するのが、よくわかる。
この間、ずっと会えていない人と、海外を旅する夢を見た。そこはその人が子供の時に見ていた大昔のコマーシャルの映像が撮られた国であった。私はそのコマーシャルを見たことがないのに、その人がメールの中で語った思い出話から、鮮やかな映像として、私の夢の中で現実となった。目覚めた時、その人と高級なホテルのレストランで食べたメニューまで覚えていて、我ながら驚いた。

夢の中ではすべてが可能だ。
何十年も前に死んだ飼い犬とも、よく遊ぶ。犬小屋から逃げ出したり、他の犬に飛びかかったり、問題ばかり起こして家族を困らせたものだが、夢の中でもやっぱり、困ったことばかりしでかすのだ。心配でおろおろし、毎度ぐったり疲れて目覚める。だが、どれほど会いたいのか、全く忘れていないことに気づかされる。夢の中で、犬を抱きしめ、ゆっくり頭や体を撫でてやっている、その毛の色や感触が目覚めたあとも残っている。

ちなみに犬も夢を見る。横たわって眠っているときに、手足を動かしているのは走っているのだろう。不思議な鳴き声をたてたりしている。
きっと猫や鳥や兎や、魚まで、眠る動物は夢を見ていると思う。

もう会えない人に会えることが一番大きいだろう。その人に言えなかったこと、出来なかったことが出来る。それは大抵はもう少しのところで目覚めてしまう、不完全なものだが、救いであるのは間違いない。

動物はなぜ眠らなければいけないのか、眠る必要がなければその分活動時間が増え、いろんなことを成し遂げられるのに、と思う。けれど、眠らなければならない以上、最低でも人生の四分の一は、夢を生きている。
(日本人は世界の基準から見て、睡眠時間が短いのだそうだ。その上、減らしたら、疲れが取れず、逆に効率が悪くなるだろう。)
別の友人で、私以上にはっきりと、しかも長い夢の詳細を覚えていて、語れる人がいるのだが、宇宙に旅したり、やりたいことがストレートに現れて、そこまでいくと天晴れで、羨ましい。大富豪でなくとも、月でも、どんな星でも、「星の王子さま」のように行けるのだ。一円も払わずに、ただ眠るだけで。

最近はこう考える。
私にとって、夢もまた大切な「現実」「人生」なのだと。その中でどれだけのことを経験するか。たとえすぐに忘れてしまっても、潜在意識は覚えていて、きっと考えや行動に影響している。

もう一つ、眠りすぎの正当化をするなら、絵のビジョンや、言葉を綴るアイディアとともに目覚めることがある。試したい色の組み合わせや形を、急いでメモしないと、忘れてしまう。夢の記憶は、まるで蒸気のように消えてしまうのだ。

睡眠は、「別の世界」で目覚めている、と言ってよい。

夢は、その人自身に普段は意識しない現在、過去、未来を語っている。


(使用画材: パステル、黒い紙)