大久保千代太夫一座寺山修司朗読劇&千代フェス『ここは静かな最前線』

事前には知らなかったんですが、土曜の夜公演と日曜の公演では、開場30分前からミニ市街劇が上演されました。

早めに受付けした人たちを引き連れて阿佐ヶ谷駅前をあちこち。

かつて天井桟敷がやった時は地図を持った観客が街を巡りましたが、今回は短時間なので先導者たちがいました。

「観客」役となるお客さんたちの引っ張るのは天井桟敷にいらっしゃった根本豊さん。

何だ、この贅沢。

ザムザ阿佐谷の前を出発、駅の南口で始まった芝居では1975年の市街劇の話が。

その周りでは里見瑤子さんと西風じゅんさんが足を止める人たちにチラシ配り。

我々も観る側から観られる側へと連れて行かれます。

そこから交差点を渡ってアーケード街へ。

とあるビルに岩弦とさんと森永太郎さん。

6階には状況劇場の大久保鷹さんと天井桟敷の関登美子さん。

どうやらそこに寺山修司さんが来ている体での対談を、見えない存在である我々が覗き見るという設定だったらしいんですが、ねぜかさっきまでいた寺山さんは帰っちゃったという流れに。

土曜は関さんがわずか3年だったけどそれを50年小出しに生きていると。

日曜はJAシーザーさんが寺山さんをムッシュと呼ぶかどうかで機嫌が分かるとか、名高い襲撃事件や覗きで逮捕事件などに触れ、「芸術と犯罪は紙一重、安全な芸術なんて無価値」と。

演劇も今は耳触りのよいものが多くなりましたから、大御所たちには思うところがあるんでしょうね。

南口喫煙所近くには反町鬼郎さん。

南口のアーケードを抜けてザムザ近くの住宅街へ。

駐車場が広がるマンションに囲まれた曲がり角から辺り一面に響き渡る科白。

なんかアングラチックに飾り付けられた正体不明の入口が偶然にもあったりして。

そしてザムザに続く三叉路に。

待ち受けるは白川沙夜さん。

月蝕歌劇団ではゲッベルスやハートの女王を演じた司法書士と役者の二足の草鞋を履く稀有な方。


「……ここがザムザ阿佐ヶ谷!寺山修司と併走しながら時代を挑発し続けた高取英と月蝕歌劇団の策略の!策動の!我らがアジト!私にとっての、〇〇(自分の言葉)です。…」というのが私の台詞だった。〇〇は悩んだ末「第二の故郷」にした。

沙夜さんのXより


その科白を聴きながら、月蝕ファンもきっとそんな思いだよと。

ザムザに行く時、どこか帰って来た感があるんですよね。


主宰の千代太夫さんから聞きましたが、どこからか早速苦情が来たそうで。

別に通行人を無理やり巻き込むこともなかったし、さほど邪魔になるようなこともなかったし、騒音というものもなかったのに。

それでも受け入れられない現代の精神をあぶり出したところは、まさに鷹さんが言った「芸術と犯罪は紙一重、安全な芸術なんて無価値」に通じるものがある。

それにしても人の心の狭量さの蔓延は悲しいね。

阿佐ヶ谷だの高円寺だの下北沢だのは何かが起きてこその街だと思うんですけどね。

野外劇とはまるで違う市街劇、参加出来てよかったです。