疫病流行の中、今年最初で最後の公演となった月蝕歌劇団「陰陽師 安倍晴明-最終決戦-』。
自分には2015年の再演以来、2度目の観劇。
以下、あらすじのネタバレのみw






史上最強の陰陽師安倍晴明のライバルといえば在野の凄腕陰陽師芦屋道満というのは、知る人ぞ知るところ。
映画「陰陽師」で真田広之さんが演じた役です。
最終決戦ということは、道満と雌雄を決する安倍晴明の活躍物語。
と言いたいところですが、そこは月蝕歌劇団、簡単にはまいりません。
朝廷での道術比べで道満(國崎馨さん)に勝った晴明(白永歩美さん)は、唐に渡り伯道上人(霍本晋規さん)の下で陰陽道の奥義を学ぶ。
負けて晴明の弟子になった道満は晴明の妻梨花(石津ゆりさん)を篭絡、晴明が隠し持つ陰陽道の秘伝書を手に入れる。
7年の修行を終えて晴明は帰国にあたり、上人から三つの戒めを授けられるが、その一つ大酒の禁を破ったところで道満の計略にかかり、首を斬られ死体は五条河原に埋められてしまう。
文殊堂の不審火で凶事を知った伯道上人が日本に渡り、人造人間として晴明を蘇らせ道満を倒そうとするところを、未来から来た天才少年カリガリ博士(紅日毬子さん)に返り討ちにされる。
お前も未来に行けと言い遺す伯道。
時は21世紀。
憲法改正により再軍備し核兵器保有国となった日本新国は、第2次日米戦争勝利のためにカリガリ博士と手を組み、蘇生させたエジソン(田村信さん)と過去から連れて来た道満を取り込み改造人間を量産。
10万の鉄腕軍団の進軍でついにホワイトハウスで城下の盟となる。
アメリカ大統領(真弥優希さん)に映画「猿の惑星」になぞらえて貶められながらも王者とうそぶく広瀬大佐(里見瑤子さん)を、カリガリ博士はもうひとつの王キリスト(霍本さん)と対決させる。
このカリガリ博士、実は銀河系の彼方から来た異星人で、地球の進化を見守って来た人物。
いつまで経っても争いをやめようとしない人間を見て、地球を人間のいない、鬼と獣だけの世界にしようとしていた。
人間か機械かの選択を迫られる鉄腕軍団の少年たち。
人間を選んだ少年たちは、カリガリの手にかかかって果てる。
広瀬はカリガリを倒そうとするが、時間を自由に止められるカリガリに敵うべくもない。
道満を倒すために晴明も式神を従えて未来に潜入するが、妻梨花の自裁した真実の最期姿を見せられて、人造人間の禁忌の情を動かされ、再び煙りと消えてしまう。
晴明最後の決戦に加勢するために一族を引き連れて来た晴明の母狐葛の葉(川合瑞恵さん)。
この世界にはお前たちもいらない、と狐たちがカリガリを噛み殺す。
そしてその命と引き替えに、晴明を再び蘇らせる。
情を封じ陰陽道を極めた晴明は、世俗には自身のアンドロイド(西垣紫野さん)を残し、自分は星と対話しながら狐の世界に生きることを選んだのであった。


劇団Twitterより、撮影:菅沼剛弘さん(@SuganumaPhoto) 

要するに、道満と戦って1度は死んだ晴明が蘇って未来で横暴な宇宙人を狐たちとでやっつけて、お母さんの故郷の狐の世界に帰って行きました、というお話。
高取ワールドにしては、結構分かりやすい作品です。
ちなみに広瀬大佐は、江戸時代の儒学者山崎闇斎の亡霊だそうで。
大東亜戦争に負けたのが許せなくて、自ら戦うと出て来たらしい。
そんなことがさも当たり前の如く起こる月蝕ワールド。
慣れたら楽しいですよ。
先代の時とは演出も変じた「陰安倍晴明―最終決戦―」はザムザ阿佐谷にて16日まで。
これを逃すと月はまた半年雲に隠れてしまいます。

劇団Twitterより