人の世は変わる
故郷の坂道を下ると
こんなに世は変わっているのに
溝の上にはまっている
コンクリのどぶ板の
ぎしぎしいう音だけが
まったく同じで
その音を聞いたとたん!
おとなしく髪を切ってもらうと
帰りに100円くれた床屋
子どもは150円で入れた銭湯
通るといいにおいのする畳屋
名物カツサンドまで作っていた駄菓子屋
坂道ぞいの家の窓から
顔を出すともだち
すべてすべて
一度に
あふれるように
夕暮れの幻となって見ゆる
その幻が消えないように
わざと溝の上を
どぶ板を鳴らして歩いていく
見ていたって
さびしいだけでも
そのさびしさを
味わうことで
わたしに故郷があることを
確認するだめに