天の川のようなジュンサイ | 世界のブナの森

天の川のようなジュンサイ

2001年にこの池を初めて訪れたときにはオオクチバスが大繁殖しており、ゲンゴロウ類もメダカも絶滅した死の池だった。上流側にキタノメダカもゲンゴロウ類も残っている池があり、3年かけて手探りでオオクチバスの駆除方法を確立して以降、さまざまな生きものが復活した。
その後は隣接する池でのアメリカザリガニの大繁殖と駆除の継続、高速道路が真上を通る計画などが重なり、膨大な時間と労力をそこにつぎ込まざるを得なかったが、予定された道路の線形が変わるところまで、23年間にわたって個人で対応してきた。

 


今回は上流側からアメリカザリガニが入って数年が経過し、下流に向けて拡散が止まらず、いよいよ最後の年を迎えている。民間の個人でもここまでできる、という先例は示したが、私もこの池にこれ以上の時間を使うことはできない。長く再生してきた場所の最後を看取るのはあまりにも辛いが、若者が「行きましょう」と言ってくれたので、様子を見てきた。

 


高速道路を走る車の音が絶えないが、その池の流域だけは照明も届かないよう暗闇が保たれ、水面には天の川のようにジュンサイの葉が浮かぶ。このジュンサイも20年前には消えていたが、オオクチバスの駆除後に再生したものだ。岸辺を歩くと、いつも通りの場所にゲンゴロウ類もメダカも姿を見せてくれた。しかし、刻々と迫るその時を知らずに泳ぎ回る姿を見ているだけでこみ上げてくるさまざまな感情を押し殺して歩く。

 


堤防には、鳥に食われたアメリカザリガニの死骸が転がっていた。
10月14日夜、山形県新庄市