ツチハンミョウの日 | 世界のブナの森

ツチハンミョウの日

4月3日の午後にスロベニアからハンガリーに走り、Budapestに入った。

Meloe variegatus, nr.Budapest, Hungary

ツチハンミョウといえば藍色の虫だと決まっているが、世界には藍色ではなく虹色に輝くツチハンミョウがいる。その存在を知ったのは2001年の5月、ウラジオストクのIBSS(ロシア科学アカデミー極東支部)の標本庫でのことだった。そこには100年以上前のウラジオストクでの標本と、近年のハンカ湖付近での標本が鎮座していた。以後、行くたびに、同じ標本を何度眺めたことだろう。どうしても撮りたいと、ハンカ湖にも行ったし春の草原も繰り返し歩いた。最も近接していたのは2014年5月にアツモリソウを目的にハンカ湖西岸の、内陸の要素が強い草原地帯に入った時だと思っているが、その時もオオツチハンミョウのみに終わっている。...
20年近く、どうしても会いたいと思っていた虫に、今日ようやく会えた。ハンガリーのブダペスト郊外の丘の上で、多数の他のツチハンミョウMeloeに混じって、わずか2頭だけが目の前に出てきた。感慨もひとしおだったが、最終的な目標はロシア極東で会うこと。ヨーロッパと極東では色がかなり違う。こちらでは地色は紫だが、極東では藍色のなかに虹色が浮かぶ。極東の個体群を、いつの日か美しく撮らねばならない。

 

キバナノアマナの花の間を歩くMeloe variegatusの姿を撮ろうと思ったら花に齧りついて、あっという間に食べてしまった。

 

Meloe cicatricosusは、翅の点刻が非常に粗いことが魅力的。いずれも種も、幼虫が花に上がってハナバチ類を待ち、しがみついて巣に入って寄生生活を送る、という数奇な運命を、世代ごとに辿る。

 

ツチハンミョウの一種Meloe cicatricosusを撮ろうとしていたら、近くを通りかかって急いでMeloeの腹の下に隠れて、「そろそろ出ても大丈夫かな」と頭を出したゴミムシダマシの一種。

 

最も多く見られたツチハンミョウMeloe proscarabaeus。オスが交尾中のメスにさんざん迫ろうとしているが、交尾中の雌雄はともに全く無関心で、しかも両方が草を食べ続けていた。世の争いの多くは異性の争奪をめぐることに起因するとすれば、ツチハンミョウというのは平和主義を極めた生物なのかもしれない。あぶれて無駄な努力を続けるオスには気の毒だが。

4月4日、ハンガリー、ブダペスト近郊の草原